5月も終わりになって、ようやくことしの邦画ナンバーワンかもと言えそうな作品にめぐりあった。〜大都会の片隅で孤独とともに生きる若く不器用な男女の恋愛模様〜けっこう使い古されたフレーズだけどそれ以外のなにものでもなく、さらにイマの時代そしてイマの東京を鮮やかに切りとり、みずみずしさに満ちた傑作。監督は「舟を編む」「ぼくたちの家族」の石井裕也。
ヒロインはこれが映画初主演の石橋静河22歳。どうせ話題になるだろうから書いておくと、彼女は石橋凌と原田美枝子の次女、そして遺伝子とは正直なりと言いたくなる魅力の持ち主。気の強そうな見てくれはどうみても父親譲りだし、いったん演技に入ると母親譲りのたおやかさが顔を出す。気になる女優がまたひとり誕生したという思い、この作品で新人賞総なめとなるかも。
原作が同名タイトルの人気現代詩集(だから今作はわざわざ先頭に“映画”とある)、なのでおそらくそこからそのまま引用したのだろう、現実社会や恋愛感情を綴ったフレーズがセリフとなって多数登場する。受けとめようによってはやや理屈っぽいと感じるかもしれないが、物語がすすむにつれてこの言葉のやりとりがだんだんと気持ちよくなってくる。
石井監督は東京のもつリアリティというか、渋谷や新宿の街が生み出す孤独感(石橋静河の父親つながりでいうと“Tokyo Cityは風だらけ”)を、タイトルがしめすような陰影の妙もからめて実に巧く切り取っていると思う。ちっともクールなんかじゃないありのままの東京、こういう作品こそ多くの海外のひとたちに観てほしいと思ったリアルな恋愛映画だった。
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