幼少期に患った難病に苦しみつつ、29歳でその短い生涯を終えた棋士・村山聖(さとし)の物語。主演・松山ケンイチが役作りのため20kg増量。1990年代中盤のリアルな話、天才・羽生善治をはじめ実在した棋士のモデルらしきキャラも多数登場。おそらく譜面も忠実に再現したであろう著名な対局場面もいくつか。将棋ファンにとってはたまらないドラマとなったのでは。
やっぱり対局シーンが一番の白眉。音楽そして効果音のいっさいない静寂のなか、駒が盤を打つ音だけしかそこには聞こえない。スクリーンから伝わる緊張感は相当なもの、まして村山聖=羽生善治(東出昌大演じる彼の描きかたはちょっと遠慮気味だったように思う)の戦いともなるや場の空気はピンと張りつめ、観ているこちらは一手ごとに手に汗をにぎる。
いや、この作品そのものの感触が、ときおり退屈を覚えるくらい静寂に包まれた印象をあたえるもの。腎臓の難病・ネフローゼとの闘いは、物語のなかでの大きく太い幹ではあるけれど、彼をとりまく棋界のひとたちが織りなす人間模様が妙に独特かつリアルなものだっただけに、もっともっと将棋世界の持つ魅力にツッコんでいってほしかったような気もする。
おそらく今回一番の名場面と言われるだろう、聖と羽生がふたりきりで酒をくみかわすシーンがあり(たぶんここはフィクション)、その会話のかみ合わなさがふたりの立ち位置をうまく表現しているようで興味深い。すべてを目の前の一手に賭けた、聖の短い生涯を“青春”と表現したことがよく理解できる、派手な部分のいっさいない、感動がジワジワとしみてくる作品でした。
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