熱狂的人気を博した少女マンガが原作、もちろん読んでいないのでキャラが違うのどうのなんてことはわからない。東京から遠く離れた漁村を舞台にした青春ラブストーリー。主演のふたりには、ことしなんと9本目の映画出演になる旬の男優・菅田将暉、そして表情の豊かさにやたらと大物感がただよう小松奈々。ふたりとも着実に演技の幅を広げつつあるなあという印象。
物語のうえでは架空の漁村になっているけれど、実際には南紀地方でのロケ。海と山と陽光のきらめきと月光のつめたさが織りなす、美しい自然を背景にした若きふたりのすがたが何度となくとらえられ、いわゆる“名シーン”的なショットがやたらと続く。ひょっとしたら新鋭女性監督の山戸祐希は、ストーリー展開よりシーンごとの美しさに重きをおいたのではなんて思ってくる。
どうしようもなくもどかしい男女の距離に、観ているこちらがイライラしてしまう感触は、70年代のATG作品や、それ以前の日活青春映画(ただ単に「錆びたナイフ」とのタイトルつながりというイージーな連想か)に通じる匂いがする。平成生まれの監督のどこにそういう感性が眠っているのだろうか、それは隔世遺伝みたいなものか、それとも日本青春映画の伝統か。
伝統といえば”地方の漁村や農村を舞台にした作品は、かならずかの地での由緒あるお祭りがクライマックスあるいは話のポイントとなる場面で登場する”という日本映画のお約束事がきっちり今回も守られている。そういう意味ではあんがい保守的な作品なのかも。さわやかさよりも、どこかやるせなさやもどかしさのほうが後味として残る10代のラブストーリーでした。
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