町工場を営む夫婦そしてそのひとり娘の前にふらりとひとりの男が現れる。夫の旧友だというその男を夫婦は招き入れ、4人での共同生活が始まる。やがて男の過去が徐々にあばかれていき、危ういながらもバランスを保っていた四角形はいびつな形になっていく…。やってきた男に浅野忠信、夫婦役は古舘寛治と筒井真理子。「ほとりの朔子」の深田晃司監督。
物語前半は一貫して静かなトーン、ムダを削ぎ落したセリフのやりとりに欧州映画の匂いを感じたりする。いや“欧州映画の影響を受けた中国映画”のような肌ざわりと言えばいいか。そこには浅野忠信の奇妙な存在感が放つ、そこはかとなく乾いたユーモアも感じられ、すべては巧みな演出の力、この作品がカンヌで高評価を受けたことにも納得がいく。
ところがある時点から、物語はユーモアなどと悠長なことを言ってられない衝撃の展開をむかえ、やがて8年の時を経た後半に突入する。前半ではユーモア方面に発揮された演出の力が、後半ではすべてひんやりとした怖さに注入される。過去をさかのぼることによって明るみになった人間関係が複雑にからみ、物語のゆくえに最後まで目が離せなくなる。
家族の物語でありながら、“家族のありかたを問う”などという陳腐な表現では語れない重層的な作品だと思う。観ているあいだのゾクゾクするような怖さと観終わったあとの重たい感触は、何度もくりかえすけど巧みな演出の力があってのこと、どちらにしても今年を代表する邦画のひとつになると断言してもいい、へヴィーな衝撃の一本でした。
ログインしてコメントを確認・投稿する