脳腫瘍と診断され余命1週間の宣告を下される母。あわてふためく父そしてふたりの息子。やがてそれまでわざと目をそらせてきた多額の借金はじめさまざまな家族の問題が表面化してきて…。「舟を編む」の石井裕也監督最新作。ただ単に家族の絆というテーマにとどまらず、入院治療の問題やバブル以降の日本人のありかたまでを問うた作品。
やっぱりここは妻夫木聡演じる長男浩介に感情移入してしまいます。肝心なところでは頼りにならない父親(長塚京三)や常にイージーゴーイングな弟(池松壮亮)にたいするいらだち、そして母(原田美枝子)や妻(黒川芽以)にたいする愛情を素直に表現できないもどかしさ。このあたりは彼の表情に注目するだけでも興味深いと思います。
“家族のありかた”という点において、ここは山田洋次作品だったらあるいは山田太一作品だったらどうなるだろう、なんて考えます。そしてこの物語を単館系の作品群にならべて勝負するには、ちょっと脇の甘い感じも正直残ってしまいます。でもシネコンのいちばん小さなハコのなかに埋もれたままとするには実にもったいない作品だとも思うのです。
そんなふうに感じたのは私がこの作品をわずか20人程度の観客とともに観たとき、たまたま隣のスクリーンではいま最大のヒットを記録しているアニメ作品を上映していて、開演も終演も双方ほぼ同じ時刻だったせいでたいへんな人混みにもみくちゃにされてしまったからかもしれません。でも“ありのまま”の人間という点において、軍配があがるのはこちらのほうかなと思います。
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