来月には86歳、ウチの父親よりひとつ年上。ステージに現れた彼は6年前よりずっと小柄に見えた。ネイビーのブレザーに黒のパンツ、白いシャツとここまではアイビー・ルック、けどスニーカーを履いているのがいかにもアメリカン。そのお召し物すべてがちょっと大き目。やっぱりちょっと小さくなったのかな。ウチの父親もこの数年で小さくなった感じだし。
背中をまるくしてピアノの前に座るといっそう小さく見える。それはまるで日なたぼっこをしている好々爺のたたずまいだ。ところがその指が鍵盤にふれたとたんホールの空気が一変する。おなじみのイントロが奏でられるやこちらはウルッとくる。そしていきなり名曲ばかりのメドレーが続く。おいおい最初からそんなに突っ走って大丈夫かいな。
大馬主でもある彼なので競馬にたとえると、今夜のライブは先行逃げ切り型のレースなのか。さらに名曲の数々は続き、おなじみのイントロが聞こえるたびこちらのウルッは重なる。この素晴らしき曲を創ったひとがいま目の前でピアノを奏でてるんや。そのすがたには神々しささえ感じる。欧米にはそんなものないだろうけど“人間国宝”という言葉がふさわしいと思ったりする。
すいません、明日の京都公演に行かれるかたもいるので極力ネタバレは避ける書きかたになりました。あえてひとつだけ言わせてもらえば、彼自身による渋枯れた歌唱は5曲ありました。そして最初から最後まで捨て曲いっさいなしの突っ走りレースでした。競走馬にたとえるとサイレンススズカってところでしょうか。競馬に興味のないかた、これまたすいません。
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