つらい映画でした。いや、つらいだけの映画ならいままでいくらでもあったけど、人生の終末を描いたこの作品、ありきたりな言いかたをすれば“身につまされる”というか、とてもやるせなく悲しいものでした。春の日差しあふれる週末の午後に観ておいてよかった。もし寒くて雨の降る月曜日なんかに観ていたら、ホント救いようがなかったと思います。
パリのアパルトマンに住むピアニストの老夫婦。妻の身体に異変が生じ、やがて夫は介護する身に。娘をはじめ周囲の人間たちはフランス的個人主義を悪いほうに発揮したのか冷ややか。夫婦の孤立感はさらに深まっていく。全編ほとんどが室内、長回しでのリアルなセリフのやりとり。ピアニストが奏でる音以外、音楽はいっさいなしの静寂なる世界。
この老夫婦役(ジャン=ルイ・トランティニャン&エマニュエル・リヴァ。それぞれ81歳と85歳!おふたりともフランス映画の傑作に数多く出演されている名優です)の演技が痛ましく悲しくせつなくて。介護する側とされる側、それぞれの身体や気持ちが徐々に崩れていき、人生の終末期に立ち向かっていくさまを実になまなましく演じていました。
劇場内はほとんど高齢のかた。介護の問題とさまざまなカタチで向き合っているかたが多かったのでは。こちらも先日エスカレーターのステップに乗るときちゅうちょしていた父親のすがたが思いだされて…。「愛、アムール」よく考えるとヘンなタイトル。原題はシンプルに「AMOUR」。このタイトルしかつけようがなかったなとあとからジワジワわかってくる、そんな作品です。
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