正直そのとき私はお腹がペコペコだった。それでもカルロスはまずサッカーだ、ディナーはそのあとだという。スペインの正餐は9時あたりからということぐらいとっくに知っている。でもこちらは7時になると腹がへる日本人なんですよ。スペイン・サッカーの聖地、カンプノウスタジアム。オリンピックを翌年に控えたバルセロナは街全体が工事中だった。
私とカルロスは一番安い当日券を買って最上段の席に陣取る。9万人以上収容できるというスタンドはほぼ満杯だ。第2の都市のクラブが首都のクラブを招いての一戦、そうかこれは甲子園球場の阪神=巨人戦だと思えばいいのか(でもレアル・マドリッドではないからヤクルト戦か)。とりあえずビールを一杯、空腹なので一気に酔いが回る。
ボールの流れに応じて9万人が大きく波打つ。F.C.バルセロナがボールを自分のものにしたとたん9万人が大きくざわめく。これ以上の記憶はまったくない、つまり試合展開や結果などはまったく覚えてない。これは何も空腹だったりビールに酔っていたりではなく、こちらがサッカーに疎いだけの話、もったいないことではありますが。
ようやくディナーにありつける。何を口にしてもトマト風味とおつき合いするバレンシア料理。レストランを出たのが日付の変わる少し前。それなのに目の前の遊園地はまだ開園時間、ネオンがギラギラするなか多くのひとが楽しんでいる。時間の感覚がまったくないのがスペイン人だ。日付が変わったんだからとりあえずもう寝ましょうや。
あれから20年余り、サッカー好きにこの経験を話すといつもこちらが想像する以上にうらやましがられる。マニアックな奴らは当時の両クラブスタメンを何人か挙げ、それを聞いたときは、ほう私はそんな名選手のプレーを生で見たのかと驚いたものの、いままたその名前を忘れてしまっている。1991年阪神=巨人戦のスタメンならいくらでも言えるのだけれど。
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