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2019年09月18日20:10

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太平洋を挟んだ両輪 ( 西田浩『秋吉敏子と渡辺貞夫』を読む )

渡米したまま彼の地で自身の世界を確立していった秋吉敏子。
彼女の推薦で米国留学し多くを学びながら、帰国して日本のジャズシーンを牽引した渡辺貞夫。

ふたりの出会いが戦後の日本ジャズ界に新しい風をもたらし、そこからはあたかもXの字を描くように、のちに内と外で、それぞれ違う航路を歩んだ両者の評伝です。

僕はずいぶん以前に秋吉さんの自伝『ジャズと生きる』を読んでいるし、「ナベサダ」さんについてもジャズのガイド本でその歩みをさらっとでも知ってるつもりなのですが、新書サイズのコンパクトな分量とはいえ、こうして2人の歩みを平行に見ながら総括してみれば、あらためて知るところがとても多い。

秋吉さんは、どちらかというと「生真面目に追求する」タイプなのに比べ、ナベサダさんはどんどん世界を広げていく「ざっくばらん」な音楽観、というより人柄なのかな?と。
とくに、米国に居続けた秋吉さんが、日本人としての内なる情感を再発見し、それを自身のジャズに取り込もうと想念を重ねられたのに対し、日本ジャズ界の顔となったナベサダさんは、逆に世界のあちこちに脚を伸ばして、その音楽観をどんどん拡げいった、というのが面白い。

秋吉さんは25年前くらいに、フェスティバルホールで開かれた「コンコードジャズフェスティバル」に出演されていたのを見たのが忘れられない。(トップ写真真ん中は、その時の新作『Four Seasons』)
ナベサダさん残念ながら未だ機会が無いまま。自分のジャズ志向と離れているから、と敬遠する向きはあったのかも。

そんなおふたりも齢を重ねられた。ナベサダさんは86歳を迎え、秋吉さんは今年の12月でなんと90歳(!)本書ではじめて知ったのだけど、15年前にビッグバンドを解散しソロとなってからは、マネージャーも付けず、身ひとつで公演活動をされているそうだ。
僕は5年前にビルボードライブで彼女のソロ公演を観た時の、お歳を感じさせない素晴らしいピアノにびっくりしただけに、本当にいつまでもお元気でいてほしいと思う。

〈 5年前のビルボード公演の日記 〉
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1920368655&owner_id=26940262

著者は両者と親交を重ねられた方らしく、その証言を丁寧に拾い上げてしっかりとした内容にまとめているのだけど、新書ということで、ボリューム的に少し物足りないのは致し方ないか。
よってレビュー評価はちょっと辛めで★★★
フォト


秋吉さんの試金石的な曲「ロング・イエロー・ロード」
実はこの曲が入っているアルバムをまだ1枚も持っていない(汗)
https://youtu.be/PNLDFZnYAL4


僕が唯一持っている(汗)ナベサダさんのアルバム『ブラジルの渡辺貞夫』(68年) 和田誠さんのジャケ画が素敵だ。
「Bim Bom」https://youtu.be/yRUhbMJz854


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