南イタリアの荒んだ海辺の小さな町で、犬のトリミングサロン「ドッグマン」を営む男マルチェロ。気が弱くいかにも小人物な雰囲気が漂う彼ながら、サッカー仲間や可愛い娘に囲まれそこそこ幸せな日々。ただやっかいなのが町一番の荒くれ者シモーネ。彼に持ちかけられた儲け話のせいですべてを失ってしまったマルチェロが選んだ奇妙な復讐とは…。
マルチェロ・フォンテという名の男優が演じた主人公マルチェロが、この作品の魅力のすべてと言っていいかも。それこそ従順な犬のような風貌、イタリアという国のイメージからはかけ離れた感のある陰気な小心者、かと言ってこんなキャラを演じられる俳優をハリウッドで探すのは難しそうだし…。案外日本の役者に居てそうな、とはいえすぐには思いつかないけど。
そして舞台となった海辺の町の寂れ具合も印象的。これまた我々が南イタリアにいだく陽光サンサンのイメージはまったくなし。陰鬱な空はいつまでも曇ったまま、何度か登場する暴力的なシーンも合わせ、とにかくこの物語全体にジメッとした空気のベールを被せたかのよう。そういえば監督マッテオ・ガローネの過去作にも荒んだ海辺の町が出てきたような。
これが人間の愚かしさと哀しみというものなのか、マルチェロもシモーネももうちょっとアタマを使ったら全然違う展開が待っていたのに、犬たちのほうがよっぽど賢そうなんてこと思ってしまったのはヤボな重箱の隅つつきか。いちおう一件落着感のあるエンディングだけど、きっちりとやるせない苦さを残してくれるのはやっぱりイタリア映画というところです。
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