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2023年02月04日16:48

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1585

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1585       

小川哲 「地図と拳」            

前々回紹介した著者の直木賞受賞作である。
ハードカバー640ページの大作。舞台は満州の
架空の都市で、ほとんどの登場人物は実在で
なく著者が創ったものだ。日露戦争から第二次
世界大戦終結まで長い大河の話である。

群像劇と言ってよい、多くの人たちが登場する。
軍人、満州鉄道の職員、気象学者、建築家、
ロシア人宣教師、反日勢力の人たち等。

登場人物と舞台となる都市こそ架空の創造物
だが、歴史の流れは史実に基づいており、
日本の軍や満鉄、まだ共産党が満州にまで
勢力が及んでいない中での反日運動などが
描かれている。多様な人物の野望と理想が
あるが、いずれも実現せず、戦闘の中で
歴史は動いてゆく。

印象的なのは、さまざまな任務を持った
若者らが仮想の内閣をつくり、日本や
満州の将来をシミュレートする。いろいろな
選択肢があるものの、楽観的な将来が見えて
こない。

戦争に積極的に賛成しても消極的に容認しても
詰まるところ戦争というものはなかなか終息
しない。今起こっているロシアのウクライナ
侵攻をも暗示させられる。

もう少し枝葉を削ってもよかったかなと
思う一方、満州サイドの人たちの思いなど
もっと書いてほしかったという感じもある。

いずれにせよ一読をお勧めする。

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