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2021年11月30日00:22

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『すからべ 前編』

 前回までのあらすじ

 商店街の小さな料理店『ジョアンナキッチン』、妻のジョアンナに先立たれた夫のジェフリーは一人で店をきりもりしながら、娘のジェシカを育てる毎日。街の皆から愛され、店は繁盛し順風満帆。だがある日、真向かいに新たな料理店『カードロ』が出店し、ジェフリーは窮地に追い込まれる、経営者は悪名高い貴族のアントニオ、金にものを言わせ有名なシェフを雇い、高級食材を使った料理を破格の値段で店に出し、ジェフリーを追い詰める。
 アントニオの狙いは娘のジェシカだった。ジェシカを差し出せば、カードロは商店街から退店し、ジェフリーに出資をすると申し出る。ジェフリーはアントニオの申し出を断ったのだが、事情を察したジェシカは、自らをアントニオに捧げることで、父を救おうとする。言い争う父娘、そこにボロボロの男がやってくる。「何か、食わせてくれないか?」「少し待ってろ」ジェフリーは男の前に料理を差し出した。「食え」「すまないが金は無い」「見ればわかる。いいから食え」料理を貪る男。
 「珍しいな、客が入ってるじゃないか?」甲高い声、アントニオだ。「出ていけ。娘はやらん!」「お前も諦めが悪いな。じゃあ最後のチャンスをやろう。料理対決をしようではないか。お前が勝てば店は引き上げよう。だが俺が勝てば、ジェシカを渡せ。まぁ、その脚じゃあ勝負にならないだろうがな」「アントニオ、俺は知っているぞ、お前がならず者を金で雇い、俺を襲わせたのだろう?!」「なんのことだかな。とにかく勝負をするのか?しないのか?」返答に困っているジェフリーの前に、男が割って入る。「その勝負、俺にやらせてもらえないかな?」

 こうして、2匹のフンコロガシによる料理対決が行われることとなった。

 **********

「大丈夫だろうな?」
「アントニオ様、心配は無用です。あんなみすぼらしい野郎に、俺が負けるわけはありませんよ。それに――例の仕掛けがありますから」
「声が大きいぞスニーク、カードロを繁盛させたお前の腕前だ。普通に勝負しても負けることはないと思うが、念には念を入れんとな」

【料理人はスタートラインに並んでください】
 コオロギのアナウンス。

「では行って参ります」
「うむ。これであの娘は俺のものだ」

【ルールを説明します。スタートの合図の後、2匹は落ちている糞を拾い集めて丸めながらゴールの試食会場まで競争して頂きます。先にゴールをした方には2ポイントが与えられます。2匹がゴールした後、3匹の審査員が糞を食べ、美味しいと思ったを選びます。審査員1匹につき1ポイントが与えられます。レースでの2ポイントと料理の判定3ポイントを合計し、より多くのポイントを獲得した方が勝者となります。ルールはご理解いただけましたでしょうか?」

「すまない。脚の怪我がなければ、俺が出るのだが……」
「一つ聞いていいかい?どうして俺のような見ず知らずの虫に勝負を任せる気になったんだ?」
「お前の触覚がどことなく死んだ妻に似てるような気がしてな。妻がお前を寄越してくれたんじゃないかと――とにかく勝ってくれ。娘の人生が掛かってる」
「ああ、死力を尽くすよ」

【さぁ、2匹とも準備は宜しいでしょうか?ではフンコロガシの料理人による料理レースのスタートです!】
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