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2020年10月07日01:25

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キミジゴク

 季節が巡る。春夏秋冬、どの季節にも君の思い出が張り付いていて、僕は逃げ場を失う。
 思い出すことも忘れることもできない。ただいつまでも僕の中にいる。
 風の匂いが乾いてきた。ぼちぼち冬が来る。怖いよ。君の温もりがこの肌に再生されるから。きっと凍えてしまう。どんなに厚着をしてもストーブを強にしても君の温もりとは違う。がんがんに暖房された部屋で僕は凍死するかもしれない。
 そうすればもう、君とお別れすることができるね、いや、もう、僕には、それしか方法がないのかも。
「なんであんなに美しく微笑んだの?」
 愛しさと同質量の憎しみを僕は探している。でも多分今夜も見つけることが出来ずに――愛しさと同じ質量で、僕は存在するだけ。
「もう愛してなんかいない」
 震える声、自分に嘘をつくこと、僕の特技だったはずなのに、こんなに下手くそになってしまった。
 もし、冬を越すことができても、桜の木の下で君が待っている。
 この地獄のようなループに落とされた原罪を、誰か僕に説明してくれ。まるで僕は、この世に存在しない物質の中毒患者だ。永劫に癒されることなく、渇望する。
 あの笑顔を。
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