あうぇー

「ヒーローインタビューは山中選手です。どうぞこちらへ」
「ありがとうございます」
「いやー、最後のすごかったですね」
「……そう、ですかね？」
「誰も考えつかない意外な作戦だったと思いますが、いかがですか？」
「いや、まぁ、ある意味そうですね」
「ご自分で考えられたのですか？」
「いや、監督から指示が出ていたので」
「今日の試合は天王山ということで、どうしても勝ちたかったというところですか？」
「それはそうですね」
「そのためには手段を選ばないと？」
「いや、そういうわけではないんですけど」
「ペナントリーグの行方を左右する大事な一戦、しかも９回裏２アウト満塁でのプレーということで、球史に残ると思いますがいかがですか？」
「の、残りますかね？」
「いや、それだけのインパクトのあるプレーだったと思います」
「うう、やっぱ残っちゃいますか」
「今日敗れた種田監督、手術の為本日を以って急遽戦線離脱するというのはご存知でしたか？」
「……はい。ニュースで」
「そして、通算1000勝目がかかった試合であったということも？」
「……あ、はい」
「それを見事阻止してみていかがですか？」
「え？えーと、ちょっと……言葉にならないです」
「試合前からあの作戦で行こうと考えていたんですか？」
「いやだから、監督の指示ですので、僕が考えたわけでは――」
「いやいや、タイムをかけて選手を集めたのは山中投手ですし、やはりあのプレーは山中選手のものですよ」
「やっぱり、そう思われますか……そうですよね」
「一塁手のグローブにボールを忍ばせた時、してやったり、みたいな感覚はありましたか？」
「いやー、ないです全然本当に！」
「しかし、さりげない演技でしたね」
「ありがとう、ございます？」
「これからも山中選手がんばってください」
「はい、ファンの皆様応援ありがとうございました」

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「２アウト満塁。優勝の行方を左右する大事な一戦、しかも相手チームの監督の通算１０００勝目が掛かっているという状況、アウェイの中まさかの隠し球での試合終了という偉業をなしとげた山中投手のヒーローインタビューでした。皆様大きなブーイングでお送りください」