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2020年05月31日09:12

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1399

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1399            

帚木蓬生 「守教」                 

これは隠れキリシタンの物語である。
NHKには人気の大河ドラマがあるが、あれは
一人の主人公の一生の物語だ。本書は、1569年
から1867年の300年にわたる、ある九州の村を
舞台とする話であり、こちらこそ“大河”の名に
ふさわしいと僕は思う。

戦国時代から江戸末期までの長い間にわたり
キリスト教の信仰が親から子へ、子から孫へ、
さらにその先へと6代、7代まで継続された
ことに僕は驚く。

キリシタンと言うと長崎県を思い出すが、
この小説の舞台は福岡県南部の大刀洗町今村と
いうところだ。著者自身、中学生時代に過ごした
ところだという。そこに今も立派な教会がある
そうだが、それには理由があるのだ。

この地は元々キリシタン大名で有名だった大友
宗麟の領地だが、ここに宗麟の家来だった武士が
大庄屋として統率することになる。宗麟同様に
大庄屋もキリシタンだが、彼の一家そして村人
たちもキリスト教を信仰する。

小村ながら、信仰の厚い村であることは信者
拡大のために来日したイエズス会神父らに広く
知られるところとなり、多くの神父ら聖職者が
村へ次から次へとやってくる。

信長の時代はキリシタン容認だった日本だが、
時代は秀吉から家康へと移り、江戸時代は
キリシタンは厳しく取り締まられることと
なった。

多くの神父や信者たちが磔の刑や拷問の
めにあったりする。しかし、著者はこうした
事件を坦々と著わしている。吉村昭に近い
ドキュメンタリー的な感じもする。

しかし、この感情を押し殺した表現法が逆に
読者に感動を呼ぶ。

文庫本上下巻の長編だが、一つひとつの時代の
出来事はコンパクトにまとめられており、
読みやすくできている。

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