お手本のような夏空
呼び声に振り向くと
すぐそこに黄色い惑星
透明な水滴を幾粒も張り付かせ
宙に浮く未確認飛行物体
私の耳に
「ほいっ」という声が届いた
映像よりだいぶラグって
あの人の手から放られて
空にぽっかり浮かんでいる
キンッと冷えた炭酸飲料
あの人の笑顔
逆光に陰影となり
眩しくって見えない
ラベルのレモン
空の濃紺にくっきりと輪郭を増し
いつまでも滞空している
それは一瞬の出来事
本当に些細でありふれた
時間の切り抜き
それでも私にとっては
一生忘れえぬ
夏
たぶん錯覚なのだろう
でもその瞬間は私には
限りなく本物に近しい永遠だった
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