スイッチに指触れたとき、耳元で闇の声がした。
「消さないでワタシは悪い闇ではない」
灯りを点けようとしていたのに「消すな」と言われて戸惑ったがなるほど、確かに灯りは闇を消す。
「しかし闇に良いも悪いもなかろう」
不満めいて漏らすと。闇からの返信。
「ワタシはアナタの心」
ふざけやがる。
「オレの心の闇だというのか?」
「そうです」
「嘘をつけ!」
確信があった。
「オレの闇が、たった電球一個で消えてしまうかよ」
「ふふふ、自分を分かっているのね」
闇、鼓膜に触れながら響く。
「もっと光を畏れなさい」
「アナタをアナタたらしめている闇」
「動物も神も持ち合わせぬ所以人間的なのですきっと」
「太陽の光といえどもアナタの体内は照らせないアナタは闇の固まり」
「体温があってもそれ以上の温もりを求める」
「闇は光と共存は出来ない」
オレは指に力を込めて。
「ああ、ちっぽけな存在だ。でも神の真似をしてあえて言おう」
闇が身構えた。
「消さないで」
「オレは怯えていない。ただここから出て行くには光が必要なんだ」
オマエがオレの闇だというなら分かれよ。
[光あれ]
道が見える。足を踏み出した。
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