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2017年08月05日23:09

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ローザンヌ国際バレエコンクール

6/3(土)、NHK-Eテレで、第45回スイス・ローザンヌ国際バレエコンクール決選(2017.2/14)の収録が放送された。
同コンクールはプロを目指す若手ダンサーの登竜門である。
吉田都(1983/スカラシップ賞)も熊川哲也(1989/第1位)も上野水香(1993/スカラシップ賞)中村祥子(1996/スカラシップ賞)も、これで受賞して世に出た。

・コンクールの特徴
参加者;15〜18歳のプロを目指すダンサー
審査;「クラシック」と「コンテンポラリー」、それぞれのバリエーションを踊る
受賞;上位入賞者は、世界一流のバレエ団・バレエ学校で1年間研修を受ける権利が得られる
スカラシップ=世界一流のバレエ学校へ1年間留学する権利を得る。且つ留学中の生活援助金付与。
プロ研修生(17歳以上が対象)=世界一流のバレエ団へ1年間研修生として参加する権利を得る。研修中の生活援助金付与。

・審査の流れ
第1段階;医療関連書類の審査
第2段階;ビデオ選考
〜結果、今回は17ヶ国74名のダンサーが次ステージへ進んだ。
第3段階;ローザンヌ現地での選考。今年2017年は1/30〜2/3の5日間。
〜結果、20人が決戦へ。
第4段階;決選、2/4。

第3段階はクラスレッスン(基礎レッスン)、これも審査の対象である。
世界一流のダンサーから直接バリエーションのコーチを受け、その吸収力も見られている。この間でも若手は大きく成長していく。

今年、日本からの決選出場者は、20人の中に4人もいた。
以下の通り、
藤本結香(15歳)、山元耕陽(15歳)、中尾太亮(17歳)、大田倫功(18歳)。

他に、オーストラリア男女各1名ずつ。
イタリア男3人、ブラジル男1,女2人。
アメリカ女1名、韓国男1,女2人。
ルーマニア女1人、中国男女1名ずつ。
ポーランド男1名。

藤本結香(15)は11番目に踊った。
クラシックでは《ラ・パヤデール》(レオン・ミンクス)〜第1ソリストのバリエーション、振付マリウス・プティパ。
小さな身体、腕も脚もまだ短い。愛らしいが、ちょこまかとした感がぬぐえない。
コンテンポラリーでは《シンデレラ・ストーリー》(プロコフィエフ)。
今年のコンテンポラリーは、全曲ジョン・ノイマイヤー(1939/米 )の振付作品となった。彼は、1973年から現在迄、ハンブルク・バレエ団の芸術監督を続けている。代表作《椿姫》《オテロ》等、人間心理を深く追求する。シンフォニック・バレエの分野でも《マーラー交響曲第3番》等、革新的作品を生んだ。
《シンデレラ・ストーリー》は計2人が踊った。
踊る1場だけでなく、シンデレラの物語の中の1部としての理解と表現が必要となる。幼いシンデレラが舞踏会にどうしても行きたいという気持、その強い思いが実際にはないガラスの靴を見つけ出してしまう。その歓びの表情がよい。

山元耕陽(15) は8番目に踊った。
クラシックでは《ラ・フィーユ・マル・ガルデ》(エロルド)、振付アレキサンダー・ゴルスキー。長い脚のラインが柔らかでしなやかだ。
コンテンポラリーでは《ヨンダリア》(フォスター)。アメリカのフォスターのおっとりした民謡的な歌曲に、現代的舞踊解釈を付け合わせる。そのアンバランスが面白い。自分の頭を殴るような仕草。舞台に頭を擦り付けて無理やり前に進もうとする、内向性と苦悩の表現。溢れでる若さの、心洗われるような踊りに惹かれる。
この曲も2人が躍る事になる。

中尾太亮(17は) 6番目に踊った。
《白鳥の湖》(チャイコフスキー)〜第3幕〈ジークフリートのバリエーション〉、振付プティパ。
均整のとれたバランス感がよい。
コンテンポラリーで踊った《ヴァスラフ》(バッハ)は、計5人ものダンサーが選曲した。その中では3人目。
装飾音符でスタートするピアノソロ、その動きがきびきびとしていて、1つ1つの動作にスピード感がある。
クラシックと違って、コンテンポラリーでは、身体の各部をバラバラに動かす事が求められる。

大田倫功(18)は10番目に踊った。
《ラ・パヤデール》(ミンクス)〜ソロルのバリエーション、振付プティパ。
ジャンプの連続ターンの躍動と清潔感。
コンテンポラリーてでは《ヴァスラフ》、その4人目。
精悍で勇敢、水が流れるようなスムースさ、全身しっかりコントロールされた動き。

イタリアの男性ダンサー、ミケーレ・エスポジト(17)はクラシックでもコンテンポラリーでも図抜けた表現力を持っていた。
クラシックでは、《ラ・パヤデール》(ミンクス)〜ソロルのバリエーション、振付プティパ。
体幹がしっかりできている。3連続ターン。その後の決めに余裕があって、美しい。技術の評価という次元を超えて、バレエという1芸術として、美の主張がある。
コンテンポラリーでは《ニジンスキー》(ショスタコーヴィチ)。
小太鼓で始まる。ニジンスキーという人物に課せられた世の要求と、それを拒否する思い、その苦悩。ニジンスキーにはショスタコーヴィチが重ねられているだろう。かなりアクロバティックな動きもある。ニジンスキーのヒステリックな動き、痙攣。
エスポジトは観客を完全に呑み込んでしまう。凄い歓声。
困難な技巧を自分のものにし、更に技巧以上のレベルに達している。番組解説の山本康介(元バーミンガム・ロイヤルバレエ団ファーストソリスト)も鳥肌が立った、と。感動した。文句なし。

ブラジルの女性ダンサー、マリア・フェルナンデス・ダ・コスタ・ドゥアルテ(17)。
クラシックでは《ドン・キホーテ》(ミンクス)〜第3幕キトリのバリエーション、振付プティパ。
おきゃんなスペイン娘という性格設定を完璧に自分のものにしている。
観ていて愉しく、観客もすっかり乗せられる。扇子の扱いが巧み。
コンテンポラリーでは《プレリュードCV》(アウエルバッハ)。
クラシックの純色感とは反対に、チェロ独奏によるモノトーンの音楽。抽象的な動きの中、そこここに人間的なささやかな動き、繊細な表現がある。
クラシックとコンテンポラリーでよい2面性を見る事ができた。

ルーマニアの女性ダンサー、ディアナ・ジョルジア・イオネスク(16)。
クラシックの選曲は《パキータ》(ミンクス)〜第1幕パ・ド・トロワの第1バリエーション。
首のラインが美しい。柔らかさとポジションの決めのゆとり。
コンテンポラリーでは《ノクターン》(ショパン)。
ピアノセンチメンソロによるセンチメンタルな歌。コンテンポラリーらしさよりも、古いロマンティシズムが強く漂う。しなやかな身体性から切なさが溢れ、うっとりする。
この曲も2人が踊った。

他に、ドホルザーク、バーンスタイン等の楽曲があった。

スカラシップ/プロ研修賞の結果と、その研修先は以下の通りとなった、

第8位 イム・ソヌ(17/韓国)
第7位 ディアナ・ジョルジア・イオネスク(16/ルーマニア)→シュトゥットガルドバレエ団での研修決定る
第6位 スタニスラフ・ヴェグジン(18/ポーランド)→ロイヤル・バレエ団へ。
第5位 ローレン・ハンター(15/米)→ロイヤル・バレエ・スクールへ。
第4位 山元耕陽(15/日本)→チューリヒ・ダンス・アカデミーへ。
第3位 中尾太亮(17/日本)→ロイヤル・バレエ・スクール
第2位&聴衆賞 マリア・フェルナンデス・ダ・コスタ・ドゥアルテ(17/ブラジル)→バイエルン国立バレエ団へ
第1位&コンテンポラリーダンス賞 ミケーレ・エスポジト(17/イタリア)→オランダ国立バレエ団(ジュニアカンパニー)へ。

解説の山本康介が言っていたように、多様なボキャブラリーを持つ人は、いろんな人格を踊る事ができる。それが演者の醍醐味だ。
各地での研修により、更に確実な基本を身に付け、多様なボキャブラリーを自分のものにして世界のトップダンサーになって欲しい。
 
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