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2023年12月22日09:05

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1646

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1646        

川越宗一 「パシヨン」          

江戸時代のキリスト教禁教をテーマにした小説は
遠藤周作の「沈黙」をはじめ少なくない。ここに
また一つ秀作が加わった。

キリスト教に寛容だった信長の後の秀吉は
キリスト教を棄教としたが、その後の徳川時代は
さらに取り締まりが厳しくなった。そんな時代の
隠れキリシタンの苦難の物語である。

主役は「最後の日本人司祭」小西マンショだが、
登場人物は多く、群像小説と言ってもいいだろう。

小西マンショ(彦七)はキリシタン大名の小西
行長の孫だったが、小西家の家臣によって育て
られる。この家臣夫婦もキリシタンである。
この家臣らに小西家再興を望まれながら、彦七は
信仰の道を選ぶ。仲間らと日本を脱出し、苦難の
船旅の末ローマに到達する。司祭の資格を得るが、
キリシタンが厳しく取り締まられている日本に
あえて帰国する道を選択した。そこに司祭を待つ
多くの信仰者が待っているからだ。彼らに自由と
生きる喜びを与えねばならない。

本作品でもう一人重要な人物がいる。幕府側の
人間だ。キリシタン取り締まりを任された井上
政重である。彼はなにより徳川による世の中の
安泰を大事と考え、それに歯向かうキリシタンを
許せない。だが、彼の妻はキリシタンで、それを
認めるわけにはゆかず離縁する。

天草四郎の島原の乱に小西マンショは間に合う。
だが、徹底抗戦を選ぶ四郎やマンショの元親友
とは異なり、マンショは投降や逃走せよと説くが、
ほとんどは戦いを選んでしまう。

人は争いを避けられないのだろうか? 社会の
安定も大事だが、その中で人一人ひとりの自由は
制限されねばならないのか?

過去の歴史物語だが、現代にも通じる普遍的
テーマが描かれている。

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