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2023年02月14日09:00

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1587

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1587       

青山文平 「底惚れ」

この著者の作品を僕は既に5〜6冊は読んでいる。
なので、本書を手に取って読み始めて「おや」と
思った。文体がそれまでの作品と違うのである。
主人公が一人称で語るというハードボイルドの
スタイルなのだ。

主人公は40代、一年限りの武家屋敷勤めをして
いる。その男が、藩主のお手付きになった下女の、
二度と戻れぬ里帰りの同行を命じられた。屋敷の
用人から言外に、下女を殺して金を奪うようにとの
指示も受けている。

だが、逆に彼は下女から殺されそうになる。
幸運にも彼は死ななかったが、彼女はたぶん
彼を殺したと思っている。男はひとりで江戸に引き返す。
彼女が好きな男は、彼女を見つけ出して、彼は
殺されていない生きていることを知らせたい。
行く手のない女が生きていくには江戸で遊女と
して生きるしかないとあたりをつけ、彼は
遊郭を訪ね彼女を探す・・・。

登場人物は少ない。男に協力する江戸の事情に
詳しい男、それに下女の同僚だった女くらいだ。

誇れるものなど何もない男の人生が、女を
見つけたい一心から少しずつ変わっていく。
遊郭を立ち上げ順調に仕事が発展していく
様子はできすぎの感があるが、そこは大目に
見ていいだろう。江戸を好きになれない
田舎者の男だが、それでも目的のために
江戸ならではの仕事につき、一心不乱に
行動をとる。このあたりが本作品の読み
どころだろう。

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