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2020年10月21日02:29

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感知器

「危険です!危険です!」

 うつらう意識、霞む視界暗闇に馴染み、ぼやぼやと眼が覚めてくる。目覚まし代わりにしている携帯に手を伸ばし、タップしまくる。見れば時刻は真夜中の4時。

「危険です!危険です!」

 目覚ましじゃない。天井から声がする。見上げると火災感知器が点滅している――誤作動か?誤作動だよな?参ったなぁ。

「危険です!危険です!」

 どうしたらいんだこれ?まずいぞこのままじゃあ近所迷惑だ。ともかく本体をいじってみよう――どこかにスイッチかなんかあるんだろう。

「危険です!危険です!」

 うるさいなぁもう勘弁してくれ!椅子、椅子、なんでもいいから踏み台になるもの……やっぱ椅子でいいや。コロ付きだけど慎重にやれば大丈夫だろう。

「危険です!危険です!」

 椅子にそうっと乗る――大丈夫大丈夫だ!手を伸ばす。暗闇の中、電気くらい点ければ良かった。パニくってた。まあいいや、こいつを止めてベッドに戻ればいい。

「危険です!」

 足元がグラつく――オイやめろ!誰だ!椅子から手を放せ!

 床に落ちる。後頭部を強打した。「ごとっ」という擬音が頭蓋骨の内側でファンファーレと同じ音量で鳴った。
 あゝ、視界がぼやける。眠りに落ちるときに似ているが、訪れるのは眠りではない何かもっと深い何か。床がぎしぎしいってる。誰か部屋を歩いている。

 天井から声がする――

「だから言ったのに」
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