朝の光が窓辺に腰かけている。そろそろ午後になる。昼の光がやってきて話しかけてきた。
「交代だぞ」
「分かっている。ちょっと待ってくれ」
昼の光は不機嫌そうに、「待てないよ。だってもう時間だぞ」と言った。「朝の光は分かっている」と言うには言うが、動こうとしない。
「そもそも何を待つ必要があるというんだ?」尋ねると、朝の光は指差しながら、「もうちょっとだけ、あの子を照らしていたい」
昼の光が視線を移すと、ベッドでの上で半身を起こしている少女がいた。手探りで何かを探している。「おい、いい加減にしてくれよ。あの子、目が見えないんじゃないのか?」「ああ、そうだよ。いや、そうだけど……それでも」
少女の指が、ぬいぐるみに触れた。手のひらで包み込むように触り、その輪郭を確かめると満足そうに微笑んだ。
「もうちょっとだけ、彼女に光を……」
昼の光はため息を吐き、「いいからそこをどけ、善人ぶるな。いや、眼が見えないからといってあの子を馬鹿にしてるのか?朝には朝の光、昼には昼の光、例え盲しいていも、皆と同じ光があの子の周りには存在するべきだ。違うか?」
朝の光は、はっと肩を竦め。「確かに、君の言うとおりだ」窓から降りた。
「心配するな。俺が彼女を照らす」
「え?」
「そりゃそうだろう?昼の光だけ照らさないというわけにはいかないじゃないか?それに、あの子に見えないからといって、サボってたらお前、天使にチクるだろう?」
顔を見合わせて、二つの光が笑った。
「彼女が目を開けたときに、どちらがここにいるのか、賭けをしないか?」
天井から声がした。
「俺も入れてくれ」
蛍光灯の声。
卓上スタンドからも同じような申し出があり、テレビも、冷蔵庫の中の電灯も、ポットについている小さなLEDまでも、声を揃えて賭けへの参戦を申し出た。
二つの光は大きく頷き、ハイタッチをして交代した。
そうして今、昼の光が、女の子を照らしている。
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