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2020年06月23日08:39

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1403

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1403              

ブレイディみかこ 「ワイルドサイドをほっつき歩け 
〜ハマータウンのおっさんたち〜」

いま旬のノンフィクション作家の最新作。
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で
数々の賞を受賞。この本は僕は未読で、この本と
今回紹介の本のどちらを読むか悩んだが、前者は
人種差別がテーマらしく(著者の子どもが受けた差別
なので、興味は持ったものの)、より自分が興味を
感じた本書を手にした次第だ。

本書は英国のおっさんたちの生きざまを描いている。
おっさんたちは50代後半から60代半ばくらいの
労働者階級だ。

これまでも外国に暮らした、暮らしている日本人が
現地の人たちの生活の様子を紹介するエッセーは
少なからずあった。だが、本書が他と違うのは、
著者が労働者階級に属しているからだ。

著者は英国に移り住んで20余年、アイルランド移民の
夫と中学生の息子と生活している。彼女は55歳で夫は
9歳年上。本で登場するおっさんたちは夫の友人や
近所の人たちだ。リタイヤした人も仕事についている
人も、仕事につきたいがつけない人もいる。

2017年から19年にかけて筑摩書房のPR誌に連載
されたエッセーがまとめられたもので、この時期の
英国人の最大の関心事と言えばEU離脱であった。
本書に登場する人たちはEU離脱派が多い。なぜ
彼らは国民投票でEU離脱に票を入れたのか? 
長引く経済の不況や仕事が移民に奪われたなど
考えられるが、そういう単純な話ではないらしい。

深刻な社会問題をとらえつつも、登場人物たちの
生活は楽しく、ときに悲しく、ドラマチックである。
なにより著者の軽妙な文章がいい。彼女は、大学を
出ているわけではないし、英国でも労働者階級
なのだが、その知識の幅の広さに僕は驚く。
政治経済の本質を抑えていて日英の比較ができて
いるし、映画や音楽、絵画にも精通していて、
教養豊かだ。

塩野七生と扱うジャンルも違うし、もちろん
書いている内容も違うのだけれど、登場人物たちを
生き生きと描く感じと、ときおり見せる個人的
意見のバランス加減が、塩野七生と少し似ていると
思った。

引き続き著者の他の本も読んでみようと思う。

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