『青空へ特攻する涙よ』

ノートを破る
文字で塗装する
授業中に考案した脳内設計図に基づいて
ひしひしと折り
折っては返し
机に押し付け
エッジをすーと親指の腹でなぞり
遂に数分の後
一機のヒコーキを完成させた

教室の窓からテイクオフさせて
すぐさま飛び乗ってやろうと計画もしたが
（そうすることが妥当である理由を僕はびっしりと塗装した）
擬人化した臆病が僕を羽交い絞めにして止めた
「仕方ない」
僕は自分の身代わりに
涙を一粒
パイロットとして搭乗させた

涙よ
予め言っておく
「このヒコーキは戦闘機だ」
青空を引き裂き
悲しみを撃墜するための戦闘機
任務を達成するに十分な装備を
僕はこの機に与えたつもりだ
そうしてまた
僕はお前の腕前を信じている
青空に点在しているすべての悲しみに標準を合わせ
撃墜させるだけのスキルをお前は持っていることだろう
しかし万が一それが果たせない場合は
涙よお前はきっと
自らを火の玉に変えて
悲しみに特攻してまでも
任務を果たそうとするだろう
いや何も言わなくてもいい
お前は僕の涙なのだ
お前の考えていることはすべてわかっている
生きて帰ってこい
もしもお前が青空で討ち死にしたなら
僕はまた新しい悲しみと向き合わなければならなくなる
きっと
生きて帰ってこいよ

時は来た
長年の宿敵である悲しみを
今日こそは根絶やしにしてやろうぜ


「出撃」