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2015年09月25日08:47

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1080

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1080               

米澤穂信 「王とサーカス」               

今一番売れっ子のミステリー作家の一人、米澤穂信の
最新作。

新聞社をやめてフリージャーナリストとなった大刀洗万智は、
雑誌社の依頼でネパールに行く。観光情報などを取材し
書くはずだったのだが、皇太子による王族殺人事件
(これは史実)にでくわし、この取材をすることに。また、
ホテルの主人に紹介された軍人から関連情報を得ようと
するが、この軍人も殺害されてしまう。

カトマンズの小さな安ホテルには、万智のほか米国人の
学生、インド人の商人、そして日本人僧侶が投宿している。
これらの同宿人の個性が強く、万智との情報のやりとりも
読ませる。また、万智につきまとうガイド役の子どもも
ストーリーに味をつけている。

派手さはないが、謎解きのミステリーにはちゃんとなって
いる。

しかし、本書の読みどころは別のところにあるのだろう。 
一つは、ジャーナリズムとは何かという問いかけ。これを
作者は主人公に自問させている。

また、ネパールという国柄を描くことで、異文化を紹介
しながら、日本としての付き合い方にも少し触れている。

必ずしも、そうしたテーマに結論を下されたわけでは
ない。だが、主人公自身が迷い惑うと同様に、読者に
考えさせるという意味では、作品として成功していると思う。

僕自身数年前にネパールを訪れたが、カトマンズの
街の様子や、空気感など、上手に捉えている。

抜群の傑作ではないが、じっくりと秋の夜長に楽しめる
作品である。

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