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2015年06月03日07:43

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1062

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1062               

東山彰良 「流」                        

舞台は台湾、登場人物は元大陸にいた人たち(これを
外省人と呼ぶ)と元々台湾にいた人たち(内省人)の
両方合わせて、いずれにせよ台湾人。そんな小説なの
だが、著者は日本人だ。

ときは1975年。第二次世界大戦が終わって長いが、
中国と台湾の緊張関係は続いている。その中で、
総統の蒋介石が亡くなる。

主人公の少年、秋生はハイティーン。祖父母、両親と
共に台北で暮らしている。頭のいい子で、親たちは
大学に進学してほしいと思っており、本人もその気なの
だが、親友を含めまわりの環境はヤクザなど危ない
人間が多い。

秋生を可愛がる祖父は、中国の国民党の出身で、
日本軍や共産党と戦ったことがある勇士である。
そんな彼が突然殺される。いったい誰が、何の
目的で? 警察は捜査を進めるが、犯人像が見えて
こない。

秋生は、暴力事件に巻き込まれたりして、大学には
入れず軍隊に入ることになる。幼馴染の看護婦と
恋におちるが、やがて別れることになる。

登場人物も個性的だ。叔父の一人は怠け者、もう
一人の叔父は船乗りで世界中を旅している。秋生と
友人とが対決することになるチンピラたちなど。

基本的には青春小説でありミステリーなのだが、
この作品の別の魅力は中国と台湾の現代史が
そこで生きた人間たちの言葉を通じて大変よく
わかる仕組みになっていること。

1968年生まれの著者がどうしてこのような作品を
著すことができるのか、という率直な疑問を僕は
感じた。少し調べてみて分かったことは、著者は
台湾生まれ、ただし現地にいたのは5歳まで。
その後、中国に留学したことがあるらしい。そして、
この物語の主人公のモデルは著者の父親らしい。
これで納得。

波乱万丈の面白いエンタメ小説で、買って損は
ない本ですぞ。


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