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日記一覧

望月衣塑子「新聞記者」
2017年12月28日23:38

自慢話とか内輪受け、尋常じゃないエピソード等がなく、好感が持てる。人と会うこと、旅が苦手では無理だなと、いつしかジャーナリストを職業にする目標を捨てた者からみると、眩しい。ま、それはそれとして、スクープでなく、ジャーナリズムが連帯して立ち向

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桜木紫乃「風葬」
2017年12月28日22:48

多くの者がその運命的な不幸を深くうずめて死んでゆく。そしてそれもいつか忘れられる。この世になかったもののように。まさに「風に」「葬られる」のだ。ほんとうに哀しい物語だ。それが人生の本質なのだから。

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まるで甲斐の「愛と呼ばれるもの」を知っているようなタイトルだ。愛。これほど頻繁に使われる言葉はない。しかし、これほど多義的な、ある意味いい加減な言葉はない。人は「愛」と呼ぶが、オレは(私は)そんないい加減な言葉で、言葉では言えないことを言っ

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「サンキュー」「じゃあね」誰に向かって、何に向かって言ってるんだろう。聴き手に、プレイヤーに、過去の自分に。31年前言った「サンキューじゃあね」は、「サンキュー、じゃあね」になり、昨夜「サンキュー」「じゃあね」になった。昨夜、あるファンが言っ

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僕は、しょうがないよ、どうでもいいよそれは、任せるよ、人それぞれだから、で済ませてしまうことが多い。しかし、実は、しょうがないと思っていない、面倒だからそう対応するだけだ。効率がいいか、なんの得があるか、対費用効果。そういう言葉でまとめられ

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さっぱりした人間関係(濃密か否かにかかわらず)しか持たない登場人物。人間関係が狭い僕は、とても親近感を感じる。そして、それぞれがかなり独特の人間関係のなかで生きている。多かれ少なかれ、たぶん、みんなそうなんだろう。ほら、あなたの人間関係もこ

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「Black Box」 伊藤詩織
2017年12月04日11:41

安倍番記者からの準強姦被害。2重のBlack Boxがそこにある。おおそうだったのか酷い話だ、じゃあない。ああやっぱりなそういうことはあるんだろうな、と感じる。ほんの少し、仕方ないのかな、と感じる。そして、仕方ないと感じる、この社会の現状を追認してい

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この人の書いたものは何冊か読んだ。なるほどな、やっぱりな、と思う。ええ!じゃないから面白いのだ。つまり、有事には自衛隊は米軍の指揮下に入る。指揮権はアメリカにある。アメリカは日本を基地として他国を攻撃出来る。(イラクすら、それを拒否した)昨

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桜木紫乃「ブルース」
2017年11月23日22:17

「無垢の領域」があまりによかったので、最新作を読んだが、これはまったくリアルじゃない。物語としても、影山博人がどうのし上がったか、がまったく書かれない。それを狙ったんだろうが、こういう話はオレは好きじゃない、な。余技、かな。

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桜木紫乃「無垢の領域」
2017年11月23日22:08

タイトルから素晴らしい。藤沢周に「紫の領域」というのがあるが、それ以上にナイスタイトル。だいたい「無垢」と「領域」というのは、まったく相容れない言葉だ。そのように、相容れないものを抱え込み、流される者たち。この物語には、強烈な自分を持った者

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古井由吉「杳子・妻隠」
2017年11月23日21:50

恥ずかしながら、初めて古井由吉を読んだ。本好きたるもの読まなきゃね、の一人だろう。が、オレにはうまく理解出来なかったし、感覚的な共感も感じなかった。やれやれ。

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イラク・アフガン戦争に従軍したジャーナリストが、帰還後に病んだ元兵士を追うドキュメント。戦場で起こるであろうことが起こり、人間性が破壊されるだろう予想通りに破壊される。しかし、結局、彼らのそばにいないとわからないのだ。いや、近くにいてすら、

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超然者たらんとする「余」は、袂君と見栄の張り合いの果てに、沖縄に入ったりバンドをやったり、する。が、そもそも「たらん」とすること自体が超然者じゃなかった、と思い至る。なんて解釈は、どうでもいいだろう。世の常識をつきつめていくときにしばしば起

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桜木柴乃「氷平線」
2017年10月09日16:25

絶望的な状況を脱出した主人公の足を引っ張るのは父親であり、それを止めようとした母は無理心中を遂げる。愛した女は「ここから出ようなんて思わなければよかった」と言い残して、目の前で凍る海に身を沈める。それを悲しめない、凍りついたこころ。人間は本

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人間に寄生し、周囲の人間からその概念を盗む宇宙人。たとえば「家族」という概念を盗まれた人間は、自分と他の者という区別しかしなくなる。「時間」という概念を奪われた人間は、もはや廃人だろう。人間の共通概念とは、そういうものだ。言葉が奪われれば、

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戸田文化会館は、オープニングの「地下室のメロディー」から、感動的な大合唱。一緒に唄うなと言うならLiveの意味があるのか?予想通り、最後の夜汽車は客出しで音源が流れるのみ。唄わないのか、という声が上がったが、あれでいい。2度目のアンコール、レイニ

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中村文則「R帝国」
2017年09月09日16:25

近未来小説として目新しいものはないが、とてもいい物語だ。何よりも、中村が言いたいこと【絶望的な国家が出現し、どうしようもない世界になってしまったとしたら、それを招いたのはあなた自身じゃないのか?】という疑問が、あらゆる場面に響いている。そう

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「もはや名前もわからなくなった人々を死者の世界に探しに行くこと、文学とはこれにつきるのかもしれない」戦後50年以上を経過して、たまたま見た「1941年の尋ね人広告」がずっと意識のどこかに引っかり、彼女の行方を探す。見ず知らずの戦時下の行方不明者で

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人間ってのはほっとけば助け合うのだ。だから政府はいらない。ホリエモンが、政府に求めることは「とにかくほっといてくれ」だ、と言っていた。おめでたいと思うが、民族や国家間のプライド(そう言えば、最も譲れないものはプライドだというくだらない曲があ

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広河隆一「帰還の坑道」
2017年08月14日15:15

DAYSJAPANの集会に行ったときに買おうとしたら、すぐに売り切れていたので、後日送ってもらった。日本人のトンネル技術者が、パレスチナの地で、最初はいやいやながら難民避難のための地下坑道建設を指揮し、彼らに同化する、という話だ。広河が書いたという

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孤児院に育ち刑務官になる主人公。物語の合間に挿入される独白は作者の独白か。いつものように。かなり同意できる独白。いくつかの中村作品でそうなのだが、どうでもいいように生きている主人公が唐突に、生きようと意志的になる。それが唐突に感じるのは、僕

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NHKのキャスターという役割の中でもこれだけのことが出来るのだ、同時にこの程度のリベラルさを維持するのがこれほど困難なのか、そしてそれを困難にさせているのは他でもない視聴者なのだ。こういう、少し考えると容易にわかることが、NHKの現場でどう

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かりそめのスウィング
2017年07月29日17:53

声と唄いっぷりの変遷がわかる。HEROから、高音の声から甘ったるさが消えたんだな。タッチは、HEROを凌ぐ突き抜け方で、アウトローは崖っぷちな感じがひしひしと伝わる。それは決して私生活が投影されたからじゃなく、甲斐が歌手として着々と階段を登

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佐野元春が詩人として、町田康が小説家として抱える、この世界への危機感。島田は、同じ小説家として、皮肉を込めて、天変地異と、人口知能が仕組んだパンデミックの同時発生という物語で、危機感を表明する。

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町田康「ホサナ」
2017年07月23日23:47

歪んだ思考を反映するように、現れるもうひとつの時間軸。人間の人間に対する、動物に対する、この世界に対する、罪。いつもの軽妙さは、事態をより重く思わせる。誰も誰かを救えはしない。絶望はあまりに深い。

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佐野元春「MANIJU」
2017年07月23日23:33

前々作の「世界は慈悲を待っている」「ポーラアスター」「詩人の恋」前作の「境界線」「紅い月」「キャビアとキャピタリズム」 のような、1聴だけでうならせる曲はない。つまり、「最新作にして最高傑作」更新は今回は、今のところない。今のところ、ね。佐

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小川洋子「物語の役割」
2017年07月23日22:27

小説とは、言葉に出来ないものを言葉で伝えるもの。テーマなどない。時代の最後尾を歩き、人々が落としていったものを拾い集めるようなもの。立ちすくんで、何かに見とれることができなくてはならない。物語を必要とする者として、それに形を与えて差し出して

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あの、89年のAGライブ直後に、甲斐にインタビューした平山雄一である。北山修が、ミュージシャンに薬物依存や自殺が多いことに触れて、言う。武道館のステージに立つと、聴き手の顔も見えず声も聴こえないのが虚しい、と。そして、ミュージシャンやアーチスト

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あの「百年の孤独」を思わせる。時間はいつもさまざまな傷を消し去る。時間は執拗に降り続く黄色い雨であり、それが燃えさかる火を少しづつ消し去って行く。けれども、記憶の裂け目とも言うべき焚火が地中にあり、乾ききったそも焚火は地下深くで燃えていて、

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さっき歯医者の待合室で読んだ日経新聞に、「月の満ち欠け」が直木賞候補になったという記事が、載っていた。「まじか?直木賞?知らないな。いらない」って気分だろうな。「佐藤正午がもっとも「らしくない」作品で名を残す?勘弁してくれ」

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