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日記一覧

世界と人生を無意味だと感じ嫌悪し罵倒するペシミストは、呪詛しながら人生を生きてしまう。熱烈な否定は肯定である。ペシミストであることをもやめなければ「解脱」は出来ない。しかし、ペシミストは解脱などする気はない。だから嫌っている世界と人生の惨状

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原発事故から継続的に現場作業員のインタビューを続けた記録。原発がいかに非人間的かいかに割に合わないか、いやエネルギー政策上必要だ失業対策が必要だと、反対派と推進派(ゼロは非現実的派?)がやり合う。このインタビュールポを読めば、そんな論争がい

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【ひょっとしたらぼくらは本当にひとりかもしれない。だれといても、どのくらいともにいても、ひとりのままかもしれない。けれど記憶のなかではぼくらはひとりではない。ぼくの記憶から妻を差し引いたらこの八年間はぼんやりと白い曖昧な空白になる。格子窓の

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青木理「安倍三代」
2020年10月15日19:16

なんだか久方ぶりの読書日記。書かないままの作品が20冊ほど付箋だらけで積んである。その中でいちばん最近読んで、比較的書きやすいので。安倍晋三って、リベラルだった祖父(安倍寛)と父(安倍晋太郎)を反面教師にしてしまったお坊ちゃんなんだなと思う。

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「あの頃」って曲の話じゃないよ(笑)。【放りっぱなしでいると 愛は いつか消えるよ きっと 消えるよ】 しかし、放りっぱなしでも消えないものこそが愛かもしれない。【そして君は帰ってきた 顔に微笑みさえ浮かべて でも まぶしい何かは 失われたまま】

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役に立つか立たないか、カネになるかならないか、が優先するこの世界に生きている者ならば、つまり僕らの誰も、植松聖の主張をたわごとと言うことは出来ない。自らも「心失者」になれば安楽死させられるべきと言い、心失者ではないことの証明として死刑判決を

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堀江敏幸「戸惑う窓」
2020年06月13日19:14

窓から外を眺める、窓から中を覗く。その視線はいつも自分の内面に向かう。作家が感応した「窓」25編。堀江は、アンドリューワイエスの作品を机の前の壁に貼っていたそうだ。今僕のいる部屋の壁には、かなり陽褪せした「クリスティーナの世界」が掛けてある

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堀江敏幸「おぱらばん」
2020年06月13日14:25

フランス留学時に、宿舎に何故かたまに食事をしに来る中国人と顔見知りになる。彼が使う、フランス在住の中国人の間で「以前」を意味する副詞として常用されていた「AUPARAVANT」という、ふたつの行為の時間差を表す副詞が、いかにも日本語「おぱらばん」っぽ

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核戦争か温暖化かパンデミックか、人類滅亡の危機を生き残った人々。都市を捨てシベリアへの移住を敢行する一家の、インテリでリベラルな父。生き残りのための争いの中で家族を失い、孤独な旅を続ける娘メイクピース。文明が潰えた大陸で、捕えられ囚人として

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村人のハガキを書き写し、オリジナルを自宅に保管する郵便局員を描く「消えた蜜蜂」、ハンガリーで拉致され見世物として愛し合うことを強制され、帰国後その女性の双子の妹と出会う「透明な迷宮」、劇作家の姉から、劇作家と妹の恋愛劇を描いた話を託された小

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平野啓一郎「高瀬川」
2020年06月11日15:00

こんな作品があったのか。意外。27歳の小説家と同年の雑誌編集者の情事を描いた「だけの」表題作1ページに字が点々と配置された「追憶」。ひとつの出来事を2人の視点から描き(ページの上段、下段で構成し、共通の出来事はまたがって描かれる)、最後に手の中

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立原正秋「冬の旅」
2020年06月10日22:09

再婚夫婦の各々の息子の相克。ポールオースターのサンセットパークと同じ設定である。父方の出来の悪い兄、修一郎。母方の優秀かつ達観した弟、行助。父は出来のいい義理の息子の方に自分の会社を託そうとする。大学生の修一郎が義理の母に乱暴しようとしたと

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「複数のジャンルのなかを単独で生き抜くなどという傲慢な態度からははるかに遠く、それぞれに定められた役割のあいだを縫って、なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せるこの間の抜けたダンディズムこそ《居候》の本質であり、回送電車の特質なのだ」という

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堀江敏幸「なずな」
2020年06月03日22:59

この作品だけ「」の会話が現れる普通の小説で、堀江作品とは思えない。と言っても、この人のファンなんて少ないだろうから、らしくないと言ってもだからどうなんだってことにはなる。土地設定はたぶん「雪沼」かと思われる。弟が事故、義妹が病気のため、生後

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探偵と助手と依頼人。依頼人が探偵事務所を訪ね、別れた妻と息子の消息調査を依頼する。だが、結局依頼人は妻と息子の消息はわかっていたのだ。3人が各々の会話のプロットに興味を持ち、そこ?という横路にそれる。いや、それまくる。その「」をまったく使わ

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フランス留学中の自分と周辺を題材にした「パリとその周辺」とでも言ったらいいのか。これも短編集。【ゼラニウム】「楽しんでいないことが顔に出てしまう欠点をのぞけば、醒めたまま周囲にあわせるのを厭わない社交的な」「受け身の人生を送る」私の、パリで

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小川洋子との往復書簡小説「あとは切手を1枚貼るだけ」で知った。迂闊だった。自分向きの小説家を見落としていた。一気に読んだので、以下のように整理した。 身辺小説ー日本 身辺小説ーフランス 単独小説 エッセイ−身辺 エッセイーフランス エッセイ

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こないだ、NHKで柄本祐主演でドラマ化されていた。阪神淡路大震災時に奔走した神経科医の、とても穏やかでつつましい記録である。正義感に酔うところがまったくなく、自分の弱さを隠さない。結論を急いだり決めつけたりしない。被災直後の被災者には、踏み

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コロンブレというサメに見いられ逃げまくり、もう逃げられないと覚悟した死の直前に、サメは真珠を渡そうとしていたのだと知る「コロンブレ」この話は堀江敏幸が「河岸忘日抄」で取り上げていた。聖者と生死をともにしたい犬に見張られている幻想に陥り、日々

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誰か信用するジャーナリストか作家が、この著作を引いていたのだが、思い出せない。僕はいつも、他者の痛みを感じることは、自分にはわからないと認めることから始まるはずだが、もしかするとその感覚(というのは他者にはなれないからだが)は、何事も受身の

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沼田まほかる「猫鳴り」
2020年05月16日19:09

猫鳴りとは、未だその仕組みが解明されていないという、あの喉を鳴らす音のことだ。最初の子供を流産しており、欝々とした日々を過ごしている信江は、迷いこんで来た弱った仔猫を少し面倒をみて元気になった後、猫が本来生きる場所であった森へ逃がすが、また

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天才クラシックギタリスト蒔野と国際ジャーナリスト洋子、普通の物語だとその設定自体に鼻白むだろうが、この二人は、その誠実さゆえにまったくそう思わせない。未来は常に過去を変えられる、過去もまた変わってしまうのだ、という蒔野の言葉が、全編に響き、

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小説は現実逃避である。そうだろう。そして同時に、現実を受け入れるためにもある。小説は「代わりに」悲しむ。村上龍は「現実ははっきりしない、はっきりしないものはどうでもいい」と、最新作MISSINGー失われているもの、で告白している。そこには「現実と

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自律神経失調で死ぬまで精神安定剤をのみ続けた。そんなことに共鳴してはいけない、そんなことは珍しくもないし、作家の自殺なんてスーパーで小池屋の塩味ポテトチップスを探すくらい、自然に目に入る。しかし、偶然みかけたこの決して有名でない作家のデビュ

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中村文則「逃亡者」
2020年05月07日12:41

潜伏キリシタンを先祖に持つ父に育てられ、大衆も宗教も信用していないリベラル派ライター山峰は、権力批判により破滅したジャーナリスト五十嵐から、太平洋戦争時に戦士を鼓舞したという熱狂のトランペットを託される。彼はトランペットの所有者「鈴木」の行

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「心はあなたのもとに」も「オールドテロリスト」もよかった。しかし、村上龍はこうじゃないだろう、と感じた。そしてやはり、村上龍は村上龍だった。父親の死によって、自分が十分歳を重ね、さまざまなものを失いながら日々を過ごしている、と感じる「私」は

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40年前に読んだこの作品が、僕にとっての村上春樹の始まりだった。タイトル作品の 友よ、 友よ、中国はあまりにも遠いという一節は何故か記憶から離れなかった。40年ぶりに読むと、7つの短編はどれもまったく覚えていない。「そう、ここは僕の場所でもない

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友川カズキの歌詞「言葉なんておぼえるんじゃなかった」は田村の詩からとっている。詩というのは「行間の谷間」を深くすることで、通常の言葉の意味を疑わせるようなものらしい。眼に見えざるものを見、耳に聴こえざるものを聴け、と言う。

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20年以上前の作品だが、僕はウチの猫ミュウがここに来てから買い、読んでいなかった。野良猫のアブサンを、ペットとしてではなく伴侶として愛した。その後村松が猫を飼ったという話は聴かない。僕もミュウの次の猫は未だいない。「かすかに口をあけて、鳴く真

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明らかに皇后雅子さんが主人公。スノードロップのハンドルネームでダークネットに政府批判を書き連ねる。触発された天皇が内閣承認を拒否し「令和の改新」を企図する。皇后が侍女「ジャスミン」とともに逃避行中に捕らえられそうになり、アメリカ大統領に直談

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