南浦和のダリヤを仮りのあはれとす 「鳥子」より。ダリアではなく、ダリヤ。不要と思われる送り仮名を付けた「仮り」。偽物をことさらに意識して「あはれ」を引き出す。平安王朝文学から遠い現代日本の片隅は花言葉の通り優雅なのか移り気なのか。
一羽のみ笑うて鴉の百一羽 「鳥子」より。笑っていない百羽と笑っている一羽を見分ける作者の意識のありよう自身を笑われている。一羽につられて百羽も笑い始めるのだろう。
鬼あざみ鬼のみ風に吹かれをり 「鳥子」より。沖積社刊の攝津幸彦全句集の箱に記されて句でもある。初期の代表作となるのだろう。 句意は字義通りに取れば、鬼は吹かれ、あざみは不動となるが、そこは書かれていない。強者と思える鬼が風に迷い漂い、弱
梅雨明けの彼岸のベルの凄さかな 「鳥子」より。けたたましく電話が鳴ったというところだろうが、なぜ電話ではなくベルか。梅雨明けであることから、彼岸が季節行事ではなく、あの世であることも明白。とすると彼岸のベルは電話の発明者ベルであり、なお