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2017年08月20日23:20

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[観劇]幸せの標本 完全版/ノックノックス

 初ウイングフィールド。40人キャパほどのビル6階ワンフロアぶち抜きの小劇場で、座席はベンチに座布団、という長時間の観劇は辛そうな空間。
舞台はなんと本物の草花が植え込んであり、ベンチやロッキングチェア、リヤカーが備わった、ヒマワリやコスモスが囲む夏の中庭、といった不思議な空間を作り出していた。(アフタートークで明かされたところによると、この舞台は本職のガーデナーさんがデザインしたものとのこと)当然ながら、舞台転換はなしで、この「庭」一場面のみで劇は進行するが、それも本作の仕掛けの一つである。
 舞台の作り以上に、驚かされたのは、ストーリーがまったきSFであったこと。ディッシュ「リスの檻」+コードウェイナー・スミス「人類補完機構」シリーズ、あるいはビオトープという点ではディレイニー「スターピット」なんかも思い起こす。
 庭で植物観察の仕事をしているらしき年配の女性と、彼女にうるさくまとわりつく少女、という場面で始まる本作だが、「船長」という男性の登場、他にも奇妙な言動の少女、男性が庭に出入りすることで、比較的早い段階で、この庭が宇宙船の一室で、研究者の女性と「船長」以外の人物は会話可能に改造された動物であることが判明する。
 その後の展開は…蜂群崩壊症候群と絡めたエコロジーの話と、家族愛の物語、どちらもあざとい程にストレートにテーマを投げかけてくるが、両者が上手く相乗していて、それぞれのテーマが陥りがちな粗雑さ、卑近さを共に免れている。3匹の動物たち、ウザいほどひたむきな「犬」、頭はいいがひねくれ者の「小鳥」、冷笑的でイジワルな「トカゲ」の各キャラクターも、寓意的でわかりやすくあるとともに、ドラマに適度な笑いも与えて良い味を出していた。今回の「完全版」で追加されたというトカゲは、個人的にはもっと底意地が悪く振る舞って、シンボル的には楽園の蛇を演じてくれても良かったと思うけれども。
 音楽は舞台裏での生演奏、リアルタイム生成される幻燈でのOP・EDの表示などもあり、養蜂家のアフタートークも含め非常に濃厚な劇体験をさせてもらえたと思う。
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