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2025年02月12日09:22

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映画「リアル・ペイン〜心の旅」

アメリカ・ニューヨークに住むデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)はウエブのバナー広告制作の仕事をしている。
今回、いとこのベンジー(キーラン・カルキン)と一緒に、ポーランドを巡る歴史ツアーに参加することになった。

ベンジーは定職にもつかず、「空気が読めない」タイプ。思ったことを次々口にする。
仲は良さそうなこのふたりだが、しょっぱなから、道中、大丈夫かな?という気になる。

彼らの「おばあちゃん」は、ポーランド出身で、ユダヤ人ゆえに戦時中は収容所に入り、過酷な状況を辛くも生き延び、アメリカへ。
祖母の遺言で、孫のふたりは、ルーツのポーランドを見てくることになったのだ。

ツアーガイドは、イギリス人の東欧史研究学者・ジェームズ(ウィル・シャープ)。
ほかの参加者は、やはり親族が収容所にいたアメリカ人夫婦、ひとりで参加の女性、そしてルワンダ虐殺で生き残ってアメリカに渡航し、ユダヤ教徒となった男性だった。

ワルシャワのホテルに着いても、ベンジーはドラッグをやりたがり、ツアー客たちで食事をしていても、ひとり浮きまくった発言をしてしまう。

1944年のワルシャワ蜂起の巨大な記念像の前でもベンジーは、ポーズを取って、スマホカメラに収まろうとする。
「民族の抵抗と悲劇」の象徴の前でそんなことは・・と思っていたツアーの面々も、ついベンジーに倣って、ポーズをとって写真を撮ることに。

ユダヤ人墓地で、年号や詳しい歴史的背景を説明するジェームズにベンジーは、「そんなことより、石を墓標に供えて、気持ちを表明したほうがいい」と意見する。

ベンジーは、列車で移動中の車内でも突然、「別の車両に行きたい」と言い出し、あげく、予定の駅で降り損ねてしまう。

そんな珍道中ながら、ツアー客たちは、ポーランドの地方にあった収容所を見学。
さすがに粛然とした気持ちになる。ここで大勢の人がゆえなく殺されていったのだ。

デイヴィッドは、ツアーの終盤、ついベンジーに気持ちをぶつける。
精神不安定なベンジーは半年前、自殺を図っていた。
「おばあちゃんがどんな思いをして生き抜いて、いまの自分たちに命をつないできたか。それなのにその命をみすみす捨てようとするなんて!」。

最後にふたりはツアーから離れ、祖母がポーランド時代に住んでいた、という家を探し当て、家の前に立つ。
不審に思った年輩の隣人がデイヴィッドとベンジーに話しかけるが、ポーランド語は分からない。
そこへ彼の孫の青年が、英語で話して通訳。
祖母を思い、家の前に石を置いたが、「その家にはいまは老人が住んでいるから、石につまづくと危ない」と、年輩男性は忠告したようだ。
それでふたりは石を持ち帰る。


マイミクさんの日記で知った映画。
わたしは1991年にポーランド旅行に行ったことがあるだけに、見てみたかった。
ワルシャワで最初に映し出される「文化科学宮殿」。スターリンからの贈り物、として建設され、いまは展望台もあるらしい。
わたしが行ったときはやたらこの文化科学宮殿が突出して目立っていたが、映像では周りに高層ビルも建ち、だいぶ風景が変わっている。

ワルシャワ蜂起の記念像は、わたしも写真を撮ったが、映画を見て、こんなに大きかったのか!? と思う。もっとこじんまりとしていた記憶だったのだが。

ポーランドの地方の平坦な丘が延々とつづくのどかなさまは、91年の旅行の時と変わらない。やはりなつかしい。

映画では収容所跡は、有名なアウシュヴィッツではなかったが、この手の施設があちこちにあったと思われる。
わたしはツアーでアウシュヴィッツ収容所を見学したが、一番衝撃だったのは、収容所のすぐとなりに病院があり、そこではドイツ人たちが治療を受け、目の前ではユダヤ人がひたすらに日々殺されていっていた、というこれ以上ない不条理を突きつけられたことである。まさに去年話題になった映画「関心領域」の世界。

旅を終え、デヴィッドとベンジーは生きづらさを思いつつも、遠いポーランドから祖母が辿り着いた地で、今後も生きていくことを思うのだった。
※画像右はワルシャワ蜂起記念像
(2月9日、キャナルシティ博多・ユナイテッドシネマ)
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