mixiユーザー(id:5348548)

2024年10月23日09:56

63 view

映画「二度目のはなればなれ」

2014年。バーニー(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)の夫婦は、イギリスの老人ホームにふたりして入居し、静かな余生を送っていた。早朝の散歩はバーニーの日課だ。

1944年のノルマンディー上陸の「Dデイ」70周年の式典が行われることになった。
実はバーニーも上陸作戦に参加した元兵士だった。
しかし退役軍人対象の、ノルマンディーへの式典参加ツアー申込みに、間に合わなかった。

ある朝、散歩に出かけたバーニーがいつまでたっても帰ってこない。
施設の介護士アデル(ダニエル・ビタリス)は朝、バス停で彼を見かけていただけに気になる。

バーニーは、団体ツアーに漏れたため、個人参加しようと、フランスまで単独行を決めたのだ。船着場からフェリーに乗り、70年ぶりのノルマンディーへ。
船の中で知り合った老人も、やはり個人参加の元イギリス兵士だった。

しかしその頃、ホーム内ではバーニーの失踪で大騒ぎに。地元メディアが行方不明の老人、と報じるまでに。

バーニーの胸に去来するのは、70年経っても消えない後悔だった。
若き日のバーニー(ウィル・フレッチャー)とレネ(ローラ・マーカス)は、ダンスホールで出会って恋に落ち愛し合う。
しかし、バーニーには出撃が迫っていた。
彼は早朝、レネに、高台から見える、美しい夜明けの空を見せる。
レネは草原で花を摘む。それは押し花にされ、70年後もホームの部屋で持ち続けることになる。

ノルマンディー上陸直前、バーニーは同じ部隊のベネットから、「故郷の恋人に渡してほしい」とケースと手紙を託される。
そかしその直後、ベネットの乗った戦車は、ドイツ軍の砲撃を受け、バーニーの目の前で彼は息絶えた。

自分は生き残り、戦友はあっけなく命を落としてしまった。バーニーは遺品を届けることもできず、長い年月が経ったのだ。
船の中で知り合った老人は、ノルマンディーのドイツ軍を爆撃したのだが、そのエリアには弟がいるイギリス部隊も進軍していた。
「わたしは弟を殺してしまったかもしれない」と悔恨の念は消えない。

そしてバーニーは、その老人にも促され、Dデイの戦死者の、広大な墓地に墓参する。
そしてベネットの墓を見つけ、遺品のケースを供えるのだった。

フェリーの中にはドイツ人の老人たちの一団もいた。
それを知ったバーニーは、あえて彼らにそばに寄って言葉を交わす。
70年を経て、恩讐がやっと溶けたようだった。

イギリスにもどったバーニーは、「失踪した老人はノルマンディーの英雄だった」と、マスコミが殺到するが、レネは、これでようやくバーニーのわだかまりが消えたことを知る。
そして早朝の散歩に出て、バーニーはレネの車椅子を押しながら、70年前と同じように夜明けの美しい空を見るのだった。

マイケル・ケイン、最後の出演作、というこの映画。
妻役で共演したグレンダ・ジャクソンは残念ながら昨年、亡くなったそうだ。

国際フェリーで、おじいちゃんが人生最後の旅に出る、いわばロードムービーである。

冒頭、「ドイツのお菓子は食わん!」とレネに言うバーニー。
ドイツとのわだかまり、というのはヨーロッパの英仏の高齢者にはまだあるのだろう。
だいぶ以前だが、イギリス人女性がイタリア人男性と恋愛して結婚しようとしたらおばあさんに「イタリアは敵国だったのに」と反対された、なて話を聞いたことがある。

夫婦愛と、第二次大戦の辛い記憶の克服、というのがテーマになっているけれど、見ながら思ったのは「戦勝国」だからこそ、こういう映画が作れるのだなあ、ということ。
なかなか現在の日本では、元兵士がノスタルジーを込めて、「先の大戦」を追想するような物語は作りにくい気がする。
(10月18日、キノシネマ天神)
6 3

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2024年10月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

最近の日記