毎週金曜日の朝日新聞夕刊に掲載の映画評頁で、この映画のことを知る。
人間みたいな猫が出てくるアニメ、とあれば、猫好きのわたしの心が動かないはずがない。
夏休み、かりん(声・五藤希愛)は父親・哲也(青木崇高)とひなびた田舎のお寺へ。
出てきた住職(鈴木慶一)は哲也を見てびっくり。
実は20年ぶりの対面。哲也は借金が返せず、取り立て業者から半殺しの目に遭い、切羽詰まって絶縁している父からお金を借りようとしたのだ。
当然、住職は激怒。行方知れずでやっと帰ってきたら金を貸せとは何事だ!
哲也はお寺を去り、小5のかりんはひとり残される。
母・柚季(市川実和子)は3年前に病死し、やさぐれた父親と暮らしているかりんは、子どもにしてはどこか達観した面と、親の愛情に飢えている一面があった。
こんな田舎で夏休みを過ごすのか・・と思ったかりんの前に現れたのは、なんと、人間ほどもある巨大な猫・あんず(森山未來)。
あんずは原付に乗ってスイスイと走って行ってしまう。
挙句にスピード違反で警察に捕まり「猫だから免許は要らないかと思ってた〜」と言うのだ。
見た目は大きな茶猫だけど、中身は完全に人間のおっさん。
平気でかりんの前でオナラをし、お酒を飲む。あっけにとられるかりんに祖父である住職は、
「あんずは子猫の頃捨てられていたのを拾ってきた。ところが20年経ち、30年経っても死なない。ついには人の言葉を話し、人間みたいな行動をする『化け猫』になったんだよ」。で、あんずちゃんは今年37歳とのこと。
この不思議な化け猫は、森の洞穴の奥の、カエルをはじめとする面妖な妖怪たちとも仲良しになる。一方、人間の友だち「よっちゃん」を気にかけ、孤独なかりんのことも気になっている。
山も海もあるこの田舎だが、都会から来たかりんは、男子小学生の目を引く。
彼らと遊んでみても、かりんはさほど楽しくない。
哲也は「かあさんの命日迄には戻って来るから」と言い置いたが、帰ってこない。
かりんは、東京にある、母の納骨堂に一人で行こうとするが、あんずも付いてくる。
そこで貧乏神に「地獄の入り口」を教えられ、かりんは
「地獄でもいいからかあさんに会いたい」と入ってしまうのだ。
かくして、かりん、あんず、地獄の鬼たちや閻魔大王(宇野祥平)まで巻き込んで、かりんの母を地上に連れ帰ろうとするのだが・・
アニメの背景は水彩画風のほんわかしたタッチ。
ただ、人物や猫や妖怪たちは、シンプルな線の造形で、正直言うと、かりんもあんまりかわいらしく見えない。ジブリなんかのアニメの画風を期待して行くとちょっと肩透かしである。
お話としてはこの季節にちょうどいい「子どもの、夏休みの大冒険モノ」。
しかし、巨大なヘンな生き物が出てきて主人公の女の子を助けたり、異界に通じる穴があり、その向こうに不思議な世界があって・・というファンタジーは、「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」の二番煎じっぽいなあ、という感がぬぐい切れなかったが。
かりんのキャラが、明るく前向きな子じゃなく、ひねくれていて可愛げがなく、田舎の男の子をうまくあしらったり、全然共感できそうにないのだが、後半は「死んだお母さんが恋しい」、小学生らしい感情をあふれさせている。
原作はいましろ たかしのマンガとのこと。
脱力感のある絵柄、かわいい、とはいいがたいあんずちゃんの造形だけど、夏休みの田舎では、猫がしゃべったり、原付バイクに乗ったりしても全然違和感がない、そんなファンタジー映画です。
(7月25日、T・ジョイ博多)
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