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2024年06月09日11:03

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韓国映画「罪深き少年たち」

1999年、全羅北道(チョルラプクト)の小さな町・参礼(サムレ)で、スーパーマーケットに強盗が入り、経営者の女性の母は、縛られてテープを口で塞がれたため死亡。
ほどなく、近所に住む三人の少年たちが逮捕された。
事件は解決したかに見えたが、翌年、管轄署に赴任してきた「狂犬」のあだ名を持つファン刑事(ソル・ギョング)に、「真犯人は別にいる」というタレ込み電話が。
ファンが事件の詳細を調べるうち、不審な点がいくつもあるのに気づく。

少年のひとりは知的障害があり、読み書きもおぼつかない。なのに自筆で供述調書を書いている。

実は、警察は見込み捜査で、前科のあった少年とその友人を逮捕し、暴行を加えて無理やり自白させて犯人に仕立てた冤罪だった。検事も所轄の部長もそれを容認していた。

ファン刑事は、電話をかけてきた少年と連絡を取り、上層部に掛け合って、収監中の少年たちと、「真犯人強盗組」を一堂に会わせ、真実を引き出そうとする。

しかし、警察の暴力と脅迫の恐怖はなかなか収監中の彼らから抜けていない。
「殺していません、やっていません」と言えず、そして犯行を告白した少年も真実を言えず、逆にファン刑事は、勝手な行動と、上司に逆らったやりとりのため、島しょ部勤務として左遷されてしまった。

母親を殺された経営者は、事件のことは忘れたかったが、訪ねてきたファン刑事が置いて行ったカセットテープを偶然聴くと、まさに強盗達が話していた、忘れもしないあの声。
「真犯人」が話すのを、ファン刑事が録音していたのだ。
彼女は、逮捕された少年たちは冤罪だと直感、ファン刑事の家に行くが、ちょうど転勤先へ引っ越ししていくところで、クルマを追うが、再会は叶わなかった。

16年後、ファンはまた島からかつての署に戻ってくる。
出所した少年たちがいまだに「人殺し」の汚名を着せられているのを見て、心がざわつく。
そして女性弁護士がスーパーの経営者と、罪を着せられた少年たちの再審請求を起こそうとしているのを知り、ファンは協力することに。
しかし、かつての上司たちの横やりが入る。蒸し返したら、冤罪を引き起こした自分たちが罪に問われるのだ。
さらに真犯人である青年は、いまは結婚して妻は自分の過去を知らないから、もうそっとしておいてくれ、法廷で証言は出来ない、と言うのだったが・・


韓国で実際に起こった事件をもとにした、サスペンス法廷劇。
再審に協力するファン刑事は、定年間近、という設定なので、ソル・ギョングも少しやつれて老けた印象(年相応??(;´∀`))。
上映後、最近「韓国映画から見る、激動の韓国近現代史」を出版された崔盛旭氏によるこの映画についてのトークショーが開催。西南学院大学の田村元彦氏が聞き手です。
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(崔)この映画の監督。チョン・ジヨンは大御所で冤罪をテーマにした映画を制作したのはこれで3作目です。
現在の尹大統領も検察出身。検察が韓国で一番力があります。金大中、廬武鉉も検察改革をしようとしたが失敗した。
チョン監督は、韓国が本当に変わるためには、警察、検察を変えないといけない、と主張しています。

(田村)日本も同様です。つい最近も鹿児島県警の事件隠蔽が報道されましたが・・韓国はそれを執拗に追及している。日本はエンタメの世界ではなかなかできない。

(崔)日本では「自己検閲」が強い印象です。

(田村)80−90年代にテレビ局が映画を作るようになってから、それが強まってます。

(崔)微妙な社会・政治問題は作りづらいんじゃないですか。

(田村)俳優はCM出演収入が大きいから、スポンサーの意向が働く。

(崔)韓国では政権によって作りやすい題材、作りにくい題材があります。
「国際市場で会いましょう」は朴正熙時代を賛美してる。朴槿恵は3回も見たそうです。
文在寅時代には光州事件がテーマの「タクシー運転手」が作られています。

(田村)「君の誕生日」はセウォル号の遺族をソル・ギョングが演じていて、まさに悲しみを体現、彼は韓国人を代表するキャラクターですね。

(崔)撮影監督が、ソル・ギョングは白いキャンバスのような俳優、どんな絵も描ける、と言っています。韓国では「意識のある俳優」という言い方をします。志願して、社会性の強い作品に出ることもある。

(田村)日本だと「意識高い」は揶揄する言葉ですね(苦笑)。
きょうの映画で、少年たちが逮捕される前に、川べりで水遊びする場面がありますが、あれは「けがれなき時代へのオマージュ」という気がします。「ペパーミント・キャンディー」の1979年のシーンで、河原でピクニックをしている・・

(崔)たしかにあの場面は、ピクニックの場面と似ていますね。
1999年の事件が全羅道でおこったときは金大中政権時代。なぜ?と思いますが、警察組織は、やはりアンタッチャブルだったようです。

ソル・ギョング主演の「ペパーミント・キャンディー」と「オアシス」はイ・チャンドン監督ですが、どちらもつながっています。共演は両方、ムン・ソリ。
朴正熙が暗殺され、つかのま「ソウルの春」がおとずれます。それが1979年。「ペパーミント・キャンディー」では主人公が純粋で、河原でムン・ソリと語らっている時代です。それがどんどん汚れていく。現実にはチョン・ドゥファンが登場する。

「オアシス」では、ソル・ギョング演じる主人公は、ムン・ソリ演じる障害者と交際するので馬鹿にされ、「変態扱い」される。しかし主人公は彼女の聡明さを見抜いている。
かつて軍政下、学生運動家は「思想的変態」と呼ばれたりしていました。
一般人が偏見を持っている二人を使い、「ペパーミント・キャンディー」の同じ共演のふたりとだぶらせ、メタファーをイ・チャンドン監督は見せてるんです。

韓国現代史は虐殺が多かった。それを赦すか、赦さないか、が、韓国の抱えている大きな問題です。
イ・チャンドン監督の「シークレット・サンシャイン」はまさにそれがテーマ。
自分の子供を誘拐して殺した犯人を、ヒロインが赦そうという前に、犯人は刑務所で「わたしは神に赦された」と言う。あれは「勝手に赦されちゃっている人」への強烈な皮肉です。軍政下で、一般市民の拷問や虐殺に手を貸した高官や警察がその後も出世したりしている。

<ここで、これから日本封切りが控えている映画について>
(崔)「ソウルの春」は、チョン・ドゥファンのクーデターがテーマで詳細に描いている・・そうですね、日本映画で言うと「日本のいちばん長い日」みたいな感じかもしれません。ホラーの「パミョ(破墓)」は墓から現れる人物の名前が、朝鮮独立運動の闘士の名前になってるんですよね。出演は、チェ・ミンシク、ユ・ヘジンらです。

トークイベントは30分ぐらいでもっとお話聞いていたかったが、なかなか濃密なお話でした。崔先生は若々しくて、大学院生みたいな感じですね(*^^*)
(6月8日)
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