mixiユーザー(id:5501094)

2024年04月30日10:02

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垣根涼介著「極楽征夷代将軍」を読んで



照る日曇る日 第2043回

後醍醐天皇の建武の新政を打倒して室町幕府を創生した足利尊氏、直義兄弟と執事、高師直の歩みをモノガタル長編小説なり。

尊氏は弟の直義と正反対の侍で、ある種の直観はあても、まるっきり確固とした定見なく、その時その時の空気に便乗してふわふわ盲動する「極楽殿」、そして彼らの忠実な下僕ながら結果的に直義と対立してしまう高師直の三者三様のキャラクターの設定は面白く、それなりに成功しているようだ。

しかし物語が後半に進むにつれて、緊密な構成が緩み始め、殊に義詮、直冬の跡目争い、南朝との交渉や降伏沙汰による幕府内の争闘が始まると、次々に生起する政治的暗闘の推移を辿るだけで精一杯となり、もはや当初の小説的感興などどこかにすっ飛んでしまう。

竜頭蛇尾とは、このことだろう。こんな杜撰な出来損ないに直木賞を授与するなんて、選考委員の目はどこについているのだろう。

     書く喜びが読む喜びに伝染す世に有難き高橋源一郎 蝶人


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