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2024年04月07日13:11

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佐藤幹夫個人編集「飢餓同盟・第58巻・2024年春号」を読んで 上



照る日曇る日 第2032回

今号の特集は「戦争」です。

佐藤さんによる社会学者橋本大三郎さんのインタビューは、コーランとイスラム教の根幹に遡って「イスラエルvsハマス戦争」の本質を抉り出した現状分析で、「イスラム世界には正統的な統治者(カリフ)が根絶やしになったので、西欧的な国民国家が根付かない。ハマスは昔の我が国の「全共闘」のようなものだ、という話」などは、得心が行きました。

後段では、欧米やイスラエルなどの国民国家も、そのうち用済みになるので、イスラムやヒンドゥーの要素を取り入れた反キリスト教的西側的な政治哲学が登場して、ホッブス流の「万人の万人に対する戦争状態」を乗り越える可能性がある!?というお話がありましたが、全世界の人類にとって幸いをもたらすその日には、私を含めた誰一人、この世にはいないでしょうね。

瀬尾育生さんの論文「1944年アーレントのシオニズム論から現在へ」は、不勉強でアーレントすら読んだことがない無知の塊の私には、難しすぎててんで歯が立ちませんでしたが、水島英己さんの沖縄シリーズ「ガザ・島・絶対不戦、負ける勇気」の「確かなことは、この<絶対不戦>と<負ける勇気>が国家や政府という「制度的」なもの、われわれを閉じ込める、あらゆる「擬制」から外に出る一歩の勇気を与えてくれることだ」という結語が、痩せ衰えたこの胸に沁みました。

次いで、宮尾節子・佐藤幹夫共著「明日戦争がはじまる「対話篇」」は、私も熱い共感と共に読了したので、江田、添田、蓮沼、雪柳の4氏による感想文も興味深く拝読できました。

それから「青木由弥子「伊東静雄――戦時下の抒情」を読む」という討議の記録が掲載されていたので、遅まきながら同書を読んでみましたら、今まで漠然としか知らなかった伊東静雄の軌跡が丁寧に辿られ、戦争詩の実像が鮮やかに分析されていたので、感嘆しました。

それから、突然のように姿を現したのが、佐伯修さんの編集・解説による村上一郎文書。
「試行」創刊当時の未公開資料は、短いけれど素敵な読み物で、「試行」以外の詩名候補案や、買ってくれそうな約40名の名前など、よくもこんな貴重な文書が遺されていたものだと感動しました。

       五、六人轢き殺してきた戦車かな 蝶人



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