☆洋ちゃんの読観聴 No. 1654
阿津川辰海 「蒼海館の殺人」
前々回の呉勝浩作品の紹介の際にミステリーの
３要素について述べた。すなわち�｜�が犯行を
したのか、��犯行の方法は、�Ｈ塙圓傍擇鵑�
動機は、というもの。
いわゆる本格派ミステリーにおいては、�△�
重要視される。犯行の手口（トリック）や
アリバイが焦点となる。だいたい名探偵や
辣腕刑事が�△瞭罎鬚箸��“反佑鯑団蠅垢襦�
阿津川辰海は本格派ミステリー作家の有望株
である。1994年生まれだが、既に質の高い作品を
出している。
本作品は「紅蓮館の殺人」の続編と言える。
館シリーズ第２弾と言っていいかもしれない。
高校生コンビが探偵として活躍する。
本格ミステリーにおいては現代の最新科学捜査は
邪魔ものなので、警察の科学捜査が及ばない
ような状況を設定することが多い。たとえば、
孤島で外からの侵入を難しくしたり、台風などの
天災で道路が遮断されたりする。
本作品では人里離れた山奥の一軒家が舞台で、
台風による豪雨で近隣から家への道路が使えなく
なる。
「紅蓮館の殺人」で名探偵コンビを務めた田所
信哉が相棒の葛城輝義を友人の三谷緑郎と共に
訪ねる。前回の事件でトラウマを受けた葛城の
様子を二人で確かめるのが目的だった。
葛城の実家では、祖母、両親と兄と姉、叔母夫婦と
その息子が滞在しており、さらにゲストとして
甥の家庭教師と姉の元ボーイフレンドが招かれて
いた。そこに連続殺人事件が起こる・・・。
犯人捜しにあたっては、犯行時間における
それぞれの人間の動きや居場所をひもとく必要が
ある。さらに彼らが見聞きしたものが真実か
どうかを確認する必要もある。そして、一人ひとりの
証言も真実とは限らない。
田所と葛城の推理は二転三転する。家族の中に
犯人がいるかもしれず、このため葛城の心理や
動きも尋常でない。
読者は何度も肩すかしをくうことになる。まあ、
それこそが本格ミステリーの醍醐味である。
現実の世界ではありえない状況や犯罪と思って
しまったら、貴方は本格ミステリーを読むのに
向いていない。パズルを楽しむのが本格ミステリー
なのだから。
ログインしてコメントを確認・投稿する