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2023年11月12日23:06
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記念シンポジウム「仏像フロンティア〜遠州地域の仏教文化圏」
浜松市美術館で開催中の「みほとけのキセキ�供善鷭�･三河のしられざる祈り」を記念しシンポジウムが開催された。
・タイトル「仏像フロンティア〜遠州地域の仏教文化圏」
・日時 11/12(日)10:00〜12:30
・会場 浜松市地域情報センター
2021年に「みほとけのキセキ〜遠州･三河の寺宝展」を開催、本年その後続展「みほとけのキセキ�供善鷭�･三河のしられざる祈り」を開催中である。
参)2021年展レポート
その1)https:/
その2)https:/
その3)https:/
参)2023年展レポート
��https:/
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・司会 久保沙里菜(フリーアナウンサー)
・登壇者 山岸公基(奈良教育大学教授)、岩佐光晴(成城大学教授)
田島整(上原美術館上席学芸員)
・シンポジウム進行 島口直弥(浜松市美術館学芸員/本展企画担当)
・基調報告 島口直弥「遠州地域の仏像の概観〜みほとけ展��･�兇鯆未靴董�
・山岸公基「三河地域の仏像について」
・岩佐光晴「駿河地域の仏像について」
・田島整「伊豆地域の仏像について」
各展約50点、計約100点の展示となったが、遠州･三河地域の寺社からの出展は10世紀〜14世紀に制作されたもの。
現存する中で最も古いのが浜松市北区の摩訶耶寺千手観音菩薩立像で10世紀後半の作。
→写真画像は上に貼付したリンクより2021年展レポートその2)参照。
太平洋戦争で失われた浜松市中区竜禅寺千手観音立像、同南区頭陀寺の不動明王立像も10世紀のものと考えられていた。
一方、田島によれば、伊豆地域には９世紀に作られたものがかなりの点数存在する。
これから調査が進めば、遠州地域からも９世紀制作の像が発見されるのではないか。
そういう意味では本シンポジウムのタイトルにあるように遠州地域は「仏像フロンティア(未開の地)」と言えるかもしれない。
時代と制作技法を考えると、10世紀〜12世紀の遠州地域の仏像の多くは一木造りによっている。前出の摩訶耶寺千手観音立像、磐田市府八幡宮の男女神像は、背刳りももしない一木である。
→府八幡宮男女神像の画像は2023年展�〇仮函�
相当傷んでいるが、浜松市北区東林寺の天王立像は12世紀の作。同じ一木でありながら、割矧ぎ、背刳りが施されている。
袋井市西楽寺の月光菩薩立像も割矧ぎ、背刳りされている。
→画像は2023年展�〇仮函�
割矧ぎ技法は中を刳り抜きやすいメリットがあるのだが、技術的にはなかなか難しい。思うような部位で割る事ができなず、壊してしまうケースもあるようだ。
定朝様式の起こりは京都平等院鳳凰堂の阿弥陀如来坐像だが、これは11世紀中頃に制作されている。
遠州地域の定朝様式は、遅れて12世紀になって始まった。
浜松市北区長福寺の阿弥陀如来坐像、岩水寺の阿弥陀如来坐像、西楽寺の薬師如来坐像、何れも定朝様式を踏襲した12世紀の作だ。
→長福寺阿弥陀如来坐像
→岩水寺阿弥陀如来坐像
→西楽寺薬師如来坐像の画像は、2022年8/9レポート「袋井 西楽寺のみほとけ� 彁仮函�
https:/
定朝様式は寄木造りという技法が伴う。定朝様式と寄木造りはセットである。
だが、地方への伝播はそうたやすくない。寄木造りは干割れを防ぐ、効率的な仕事ができるというメリットがあるが、簡単な技法ではない、習得には時間もかかる。
定朝仏を見て感動した仏師が、地方でそれを実現しようとしてまず行ったのは、一木造りに定朝様式の外観を乗せるという事だった。
豊橋市普門寺阿弥陀如来坐像、西楽寺阿弥陀如来坐像は一木割矧ぎ造りながら、定朝様式を踏襲した例。12世紀の作である。
→普門寺阿弥陀如来坐像
→西楽寺阿弥陀如来坐像の画像は、2022年8/9レポート「袋井 西楽寺のみほとけ�◆彁仮函�
https:/
定朝様式なのだが古様感がある仏像というのは、そうした時間経過の中で生まれたのである。
外形だけの真似でなく、内部において、寄木作りの構造を全うするには、時間もかかった。
こうした様式と時間の問題は様々な形でついて回る。
長福寺と岩水寺の阿弥陀如来坐像は、定朝様式でいながら、12世紀後半ともなれば、衣文の形等に鎌倉時代の様式も混じっている。
西楽寺と岩水寺の阿弥陀如来坐像は、鎌倉時代に広がった玉眼が入っている。(後世の改変で入れられた可能性もなくはないが。)
一木造りと寄木造りでは、技法だけでなく以下のような違いもある。
寄木造りにあっては使用する木は単なる「材料」でしかないが、一木ではただの「材料」ではない場合がある。これには信仰の問題が絡む。時代が古い程そういう例は多そうだ。
府八幡宮の神像には、節が像正面の目立つところにある。
ひどく傷んでいるが、普門寺の菩薩形立像(10~11世紀)も同様である。
寺社の山の神木として崇められていた樹木を活かして像を作る事になった時、節にも枝の継ぎ目にも神は宿っていると当時の人々は考えたに違いない。
シンポジウムではその他様々なテーマが採り上げられたが、今回のレポートはこれくらいにしておく。
〈参考資料〉
・図録『みほとけのキセキ〜遠州･三河の寺宝展』
執筆 岩佐光晴,山岸公基,島口直弥 他
発行 2021年3/25、みほとけ展実行委員会2021
・図録『みほとけのキセキ�供善鷭�･三河のしられざる祈り』
執筆 島口直弥
発行 2023年10/14、みほとけ展実行委員会2023
・タイトル「仏像フロンティア〜遠州地域の仏教文化圏」
・日時 11/12(日)10:00〜12:30
・会場 浜松市地域情報センター
2021年に「みほとけのキセキ〜遠州･三河の寺宝展」を開催、本年その後続展「みほとけのキセキ�供善鷭�･三河のしられざる祈り」を開催中である。
参)2021年展レポート
その1)https:/
その2)https:/
その3)https:/
参)2023年展レポート
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��https:/
・司会 久保沙里菜(フリーアナウンサー)
・登壇者 山岸公基(奈良教育大学教授)、岩佐光晴(成城大学教授)
田島整(上原美術館上席学芸員)
・シンポジウム進行 島口直弥(浜松市美術館学芸員/本展企画担当)
・基調報告 島口直弥「遠州地域の仏像の概観〜みほとけ展��･�兇鯆未靴董�
・山岸公基「三河地域の仏像について」
・岩佐光晴「駿河地域の仏像について」
・田島整「伊豆地域の仏像について」
各展約50点、計約100点の展示となったが、遠州･三河地域の寺社からの出展は10世紀〜14世紀に制作されたもの。
現存する中で最も古いのが浜松市北区の摩訶耶寺千手観音菩薩立像で10世紀後半の作。
→写真画像は上に貼付したリンクより2021年展レポートその2)参照。
太平洋戦争で失われた浜松市中区竜禅寺千手観音立像、同南区頭陀寺の不動明王立像も10世紀のものと考えられていた。
一方、田島によれば、伊豆地域には９世紀に作られたものがかなりの点数存在する。
これから調査が進めば、遠州地域からも９世紀制作の像が発見されるのではないか。
そういう意味では本シンポジウムのタイトルにあるように遠州地域は「仏像フロンティア(未開の地)」と言えるかもしれない。
時代と制作技法を考えると、10世紀〜12世紀の遠州地域の仏像の多くは一木造りによっている。前出の摩訶耶寺千手観音立像、磐田市府八幡宮の男女神像は、背刳りももしない一木である。
→府八幡宮男女神像の画像は2023年展�〇仮函�
相当傷んでいるが、浜松市北区東林寺の天王立像は12世紀の作。同じ一木でありながら、割矧ぎ、背刳りが施されている。
袋井市西楽寺の月光菩薩立像も割矧ぎ、背刳りされている。
→画像は2023年展�〇仮函�
割矧ぎ技法は中を刳り抜きやすいメリットがあるのだが、技術的にはなかなか難しい。思うような部位で割る事ができなず、壊してしまうケースもあるようだ。
定朝様式の起こりは京都平等院鳳凰堂の阿弥陀如来坐像だが、これは11世紀中頃に制作されている。
遠州地域の定朝様式は、遅れて12世紀になって始まった。
浜松市北区長福寺の阿弥陀如来坐像、岩水寺の阿弥陀如来坐像、西楽寺の薬師如来坐像、何れも定朝様式を踏襲した12世紀の作だ。
→長福寺阿弥陀如来坐像
→岩水寺阿弥陀如来坐像
→西楽寺薬師如来坐像の画像は、2022年8/9レポート「袋井 西楽寺のみほとけ� 彁仮函�
https:/
定朝様式は寄木造りという技法が伴う。定朝様式と寄木造りはセットである。
だが、地方への伝播はそうたやすくない。寄木造りは干割れを防ぐ、効率的な仕事ができるというメリットがあるが、簡単な技法ではない、習得には時間もかかる。
定朝仏を見て感動した仏師が、地方でそれを実現しようとしてまず行ったのは、一木造りに定朝様式の外観を乗せるという事だった。
豊橋市普門寺阿弥陀如来坐像、西楽寺阿弥陀如来坐像は一木割矧ぎ造りながら、定朝様式を踏襲した例。12世紀の作である。
→普門寺阿弥陀如来坐像
→西楽寺阿弥陀如来坐像の画像は、2022年8/9レポート「袋井 西楽寺のみほとけ�◆彁仮函�
https:/
定朝様式なのだが古様感がある仏像というのは、そうした時間経過の中で生まれたのである。
外形だけの真似でなく、内部において、寄木作りの構造を全うするには、時間もかかった。
こうした様式と時間の問題は様々な形でついて回る。
長福寺と岩水寺の阿弥陀如来坐像は、定朝様式でいながら、12世紀後半ともなれば、衣文の形等に鎌倉時代の様式も混じっている。
西楽寺と岩水寺の阿弥陀如来坐像は、鎌倉時代に広がった玉眼が入っている。(後世の改変で入れられた可能性もなくはないが。)
一木造りと寄木造りでは、技法だけでなく以下のような違いもある。
寄木造りにあっては使用する木は単なる「材料」でしかないが、一木ではただの「材料」ではない場合がある。これには信仰の問題が絡む。時代が古い程そういう例は多そうだ。
府八幡宮の神像には、節が像正面の目立つところにある。
ひどく傷んでいるが、普門寺の菩薩形立像(10~11世紀)も同様である。
寺社の山の神木として崇められていた樹木を活かして像を作る事になった時、節にも枝の継ぎ目にも神は宿っていると当時の人々は考えたに違いない。
シンポジウムではその他様々なテーマが採り上げられたが、今回のレポートはこれくらいにしておく。
〈参考資料〉
・図録『みほとけのキセキ〜遠州･三河の寺宝展』
執筆 岩佐光晴,山岸公基,島口直弥 他
発行 2021年3/25、みほとけ展実行委員会2021
・図録『みほとけのキセキ�供善鷭�･三河のしられざる祈り』
執筆 島口直弥
発行 2023年10/14、みほとけ展実行委員会2023
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