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2023年09月01日10:15

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韓国映画「あしたの少女」

ソヒ(キム・シウン)はダンススタジオに通っている。親にも内緒だ。
スマホで自分が踊る様子を撮影し、チェックしてみる。

実業系高校に通うソヒは担任(ホ・ジョンド)から「実習先」としてコールセンターを紹介された。
親会社は大企業なので、安心だ、と自信ありげに担任教師は言い、途中で辞めるなとクギを刺す。

コールセンターでは、ネット接続サービスの顧客からの電話を受けるのだが、いきなりセンター長(シム・ヒソプ)から「マインドコントロールが肝心なんだよ。解約したい、という客から電話があったら引き延ばして、翻意させろ」と言われた。

ソヒは先輩社員に指導を受けながら電話応対をするが、解約の申し出に「かえって違約金がかかります。継続契約だと商品券を進呈します」などと引き止め工作をせねばならない。
ときになぜすぐに解約させてくれないんだ!などと罵声を浴び、クレーム電話を受け続けるが「解約阻止率」が数字になってセンター全体が本社から評価されるため、気が気ではない。

センター長も、解約に神経をとがらせていたが、ある日、事務所の駐車場に停めたクルマの中で練炭自殺しているのが見つかった。
彼は、部下たちを過酷な環境で働かせていたことに心を痛めていたのだ。そのことについて遺書も残していた。
ところが、センターでは「センター長の遺書の内容はでたらめです」という文書が回り、ソヒもそれに署名を強要される。

顧客からのクレーム電話へのストレス、高校からの「辞めるな」のプレッシャー。
ソヒの心は次第に病んでいく。
さらに契約書と異なり、ソヒたちのような「実習生」は、解約阻止を何件も達成しても能力給がつかず、あまりにも安い月給しか支払われない。

新しく赴任した女性センター長に、おかしいです!と食って掛かったソヒは懲罰ということで3日間の出勤停止に。
大企業だからよかった、という両親に実習先のひどさを言い出せず、ソヒは「3日間休暇を貰った」と嘘をつく。

やはり工場で実習している同級生・ドンホ(パク・ウヨン)に会う。彼は元気のないソヒが気になる。
ひとりで帰るというソヒは、先輩でボーイフレンドのテジュン(カン・ヒョノ)に電話するが、テジュンは配送の仕事が多忙で電話に出られない。

そして湖でソヒの溺死体が見つかった。

死体を引き上げ、捜査していた女性警官のユジン(ペ・ドゥナ)。
女子高生の自殺、ということで処理は終わりそうだった。
しかし、ソヒのスマホが見つからず、勤務先のコールセンターに出向いてみる。

センター長たちは、「高校側が問題児を送り込んでくるから、こんなことを起こす」と逆に嘆いて見せる。ソヒの自殺原因は家庭不和なのだと、会社側は従業員に言い含めていた。

しかし、帰ろうとするユジンたちにセンター従業員の女性が駆け込んできて、センター長も自殺したこと、ソヒの職場での様子などを打ち明けるのだった。

センター長の未亡人をたずね、ソヒの高校の担任に話を聞き、ユジンは確信する。
これは、単なる女子高生の自殺なんかじゃない。背景に根深い問題が横たわっているじゃないか!
実習生を搾取する企業、ろくに調べもせず「就業率」という高評価欲しさに生徒をそんな企業に送り込む学校(就業率が高くないと補助金が下りない)、そして教育庁も、補助金の割り振りは、就業率を見て判断せざるを得ない、と言い訳する。

ひとりの女の子が死んだというのに、みな責任逃ればかり。
ユジンは絶望的な気持ちに。
さらに余計な操作をして仕事を増やすな、と上司に叱責されてしまう。

そんなとき、ソヒのスマホが発見された。
残っていた動画には、ダンススクールでむずかしいステップをマスターするために踊る、ソヒ自身の姿が遺されていた・・


これは、韓国で実際に起きた事件を下敷きにしているそうだ。
女性監督チョン・ジュリの長編第2作だが、理不尽な韓国社会の現実といい、そのリアルさを演じる俳優陣といい、圧倒的な内容が、観る者に迫って来る。

日本でも似ているが「効率化」という呪文のような言葉のもとに、人間性が疎外され、精神を壊していく社会になってはいまいか。

こういうネガティブな社会的テーマでも、エンタメ映画に制作していく韓国映画界の底力は凄いと思った。
日本だとなかなか企画も通らないだろう。
映画の前半はいわば第一部で、ソヒの心が次第に折れていく様子、そして後半では実力派俳優・ぺ・ドゥナが登場し、韓国社会の闇と言う「真実」に迫っていく、サスペンスのような作り方になっている。

わたしが、初めてペ・ドゥナを見たのは2001年制作の「子猫をお願い」だったと思うが、まだ若々しくて可憐だった彼女がベテラン俳優となり、今回は中年のちょっとくたびれた感じの警官。ほぼすっぴんではないかという顔立ちだ。
この20年あまり、日本映画やハリウッド映画にも出演し、キャリアを積んできた彼女の軌跡を思うと感慨深い。
(8月31日、KBCシネマ)
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