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2023年05月31日16:43

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1606

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1606       

ローラン・ビネ 「文明交錯」       

歴史改変小説というジャンルがある。実際に
起こった歴史を変えて、本当とは違う歴史を
つむぎだす。例えば、ヒットラーが自殺せず
連合国に勝利していたら世界はどうなっていたか、
というような話である。

著者のローラン・ビネはフランス人で、かの
ジャレット・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」に
触発されて本書を著したという。

ダイアモンドによれば、インカ帝国は鉄・銃・馬・
病原菌に対する免疫がなかったから、スペイン軍に
制服された。しかし、もしインカ帝国がそれらを
持っていたら、スペインを植民地化できたかも
しれない。

全体は4部構成になっていて、1部ではバイキングが
鉄と免疫をインカにもたらす。2部はコロンブスの
日誌で、その頃の欧州の情勢や新大陸に対する認識が
分かる。

3部がいわば本編となっていて、インカの王
アタワルパの波乱万丈物語。王位継続争いに敗れた
アタワルパは欧州へと向かう。途中キューバにも
立ちより、妻や盟友にも恵まれる。当時の欧州は
神聖ローマ帝国が支配していた。しかし、アタワルパは
苦労しながらもスペインを手に入れる。インカは
太陽を崇拝する宗教だが、アタワルパはけっして
キリスト教やイスラム教を弾圧しなかった。また
ユダヤにも寛容だった。もちろんヨーロッパの諸侯や
ローマなどの抵抗はあったものの、少しずつ勢力を
伸ばしていった。だが、英国と手を組んだメキシコが
攻め入ってきた・・・。

4部はドン・キホーテの著者セルバンテスと画家
エル・グレコが仲良く動き回る冒険話。

宗教改革など、この時代の欧州の様子や勢力地図が
ある程度頭に入っていないと、この小説は楽しめない
かもしれない。しかし、そこがクリアできていれば、
王侯貴族、聖職者、思想家、芸術家、豪商など
名の知れた人々が登場し、いわばオールスター・
キャストといった感じで楽しめる。個々の人物の
特長を把握した上で、彼/彼女だったらこの場面で
こう行動するだろう、という著者の想像力と
創造力とを楽しんでもらいたい。


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