☆洋ちゃんの読観聴　No. 1593

☆洋ちゃんの読観聴　No. 1593　　　　　　　　

永井紗耶子　「木挽町のあだ討ち」　　　　　

2010年デビューの時代小説作家の最新作。既に
いくつかの文学賞を受賞し直木賞候補にもなって
いる。僕は、この作家の作品を手に取るのは
初めてだ。

江戸木挽町の芝居小屋の裏手で仇討があった。
一人の若侍が、父親の仇である博徒と立ち合い、
本願を果たした。そして、その二年後に、この
若侍の知り合いが、仇討を目撃した人たちを
一人ひとり訪ね、仇討の様子などを聞きまわる
話・・・なのだが。

全体が６章の構成で、１章から５章までが、
一人ひとりの目撃者の聴き取り。だが、
仇討そのものの話というよりも、芝居小屋に
関わる、これら人たちの半生が語られる。
木戸芸者（たいこもち）、立師（芝居における
剣術の指導者）、衣装部屋の裁縫者、小道具の
制作者、戯作者といった面々。これらに加えて
吉原の花魁など、いわば社会の底辺に生きる
人たちの生きざまが面白い。

そして、最終章には仇討を果たした武士の
家族と藩の話となり、仇討の真相が明らかに
される。

一押しの傑作である。