昨年オープンした、中之島美術館の1Fホールで、2本の短編映画の上映。
「金曜日、土曜日、日曜日」(タイ)
タイの地方都市に住む女の子ニン(チャチャダー・ピパットナンクーン)の、バンコクの大学入学を控えた、週末の3日間を描く。
ニンは母親と洋品店で(大学で着るであろう)制服の採寸。
母親の目を盗んで、店員にちゃっかり「スカート丈は短くして」と書かれたスマホ画面を見せる。
ニンは親しい友人プーンと、家のパソコンで映画を見ようとするが、タランティーノ監督の「キル・ビル」を、プーンがすでにほかの友人と見たと知って落胆。
自分が好きな映画だけに、プーンと一緒に見たかったのに。
ニンは写真の勉強をすることになっていた。
ニンは公園で、ボーイフレンドのジャンプに自転車の乗り方を教えてもらう。
ジャンプはすでにバンコクの大学に通っている。
しかし、彼が寮を出て家から通うことになると聞いて、がっかり。それではあまり会えなくなる。ジャンプは「うちはお金に余裕がない寮費がもったいないんだ」と言い返す。
プーンが夜遅く、ニンの家をたずねてくる。
映画のことで少しブーンと気まずくなっていたこともあって、彼女も気にしていた。
いとおしさがこみあげ、ついプーンにキスするニン。
ところが偶然通りかかったジャンプがそれを見てしまった。
カメラでたわむれに、プーンやジャンプと撮った写真を、現像してプリントしてもらったニン。それも大学に持って行くつもりだ。
朝、バンコク行きのバスに乗ろうと準備するニン。見送る家族。
そして彼女がバスに乗り込むと、大急ぎで駆けつけたジャンプが彼女に何か呼びかける姿が見えるのだった。
45分ほどの短編映画だが、主人公・ニンを演じる女優さんがとてもかわいらしく(日本でいえば上白石萌音みたいな感じかな?)、10代の若者の感情が、とても生き生き描かれている。
女友達、そしてボーイフレンドとの間で揺れ動く様子がほほえましく、当たり前だが、日本もタイも青春の悩みって同じようなものなのだな、と。
監督のポップメーク・ジュンラカリン氏もゲストで来ていて、自分の作品が大阪で上映されることの謝意を述べていた。
「ドア前に置いて。ベル押すな」(韓国)
ジホ(ジウ)は中古の電動自転車を購入し、フードデリバリーの仕事を始める。
しかし、次々と連絡の入る配達をこなさねばならず、ベトナム料理の配達を請け負うと、「ドア前に置いて。ベル鳴らすな」という指示。
しかし、配達の部屋を間違えてしまい、再配達すると、注文客から「フォーの麺が伸びていておいしくない」と苦情が。
また作り直してもらうことになり、料理店の女主人(ヨム・ヘラン)に嫌味を言われつつ、「急いでください!」と頭を下げる。
さらに急に雨が降り出し、彼女はびしょぬれに。
つらい仕事のあと、妹といっしょにチキンを食べようと買って帰ると、アパートの前にはちょうどデリバリーのバイクが。その配達員も、妹が注文したチキンを持ってきたのだった。
「野球少女」でストイックでクールな女性野球選手を演じたイ・ジュヨンが、監督を務めた短編映画。
わずか20分だが、フードデリバリーの仕事の過酷さ、労働の中のささやかな喜びがその中に表現されている。
ベトナム料理店のおばさん役のヨム・ヘランは、「野球少女」でもイ・ジュヨンと共演している。
「ドア前に置いて。ベル押すな」と言うのは、極力、外の人間と顔を合わせたくない、ってことなのかな。
(3月12日、中之島美術館ホール)
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