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2023年03月03日22:24

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中国映画「小さき麦の花」

中国の西北部にある、乾燥地帯の貧しい農村。
ヨウティエ(ウー・レンリン)は兄夫婦の家に同居しているが、厄介者。
兄夫婦らは彼を、クイイン(ハイ・チン)と結婚させようと考える。
クイインは足に障害があり、ひどく内気な性格で独身のまま。

当人らの意思とは関係なく、一方的に決められた結婚。
一応結婚写真を撮るものの、ふたりには笑顔はない。

それでもヨウティエは、クイインに蒸し饅頭を作ってやり、食べるように言う。
一緒の暮らしを始めて、ともに農作業を助け合い、ふたりのあいだに思いやりとほのかな心の通い合いが生まれてくる。
両親の墓にクイインを連れて行き、紙銭を燃やし「結婚しました」とヨウティエは、墓前に報告するのだった。

村の有力者・チャンの息子が病気で輸血が必要になるが、特殊な血液型だ。
村で合致するのはヨウティエだけ。
村人たちは「パンダ並みの珍しさだな」「パンダなら中国の宝なんだが」と集会で笑うのだが、ヨウティエは輸血に応じることに。
チャンはBMWに乗って迎えに来るが、クイインは血を抜かれる、と聞きヨウティエが心配でならない。

夜遅くヨウティエが家に帰ってくると、クイインは真っ暗な中、彼を家の外で待っていた。

夫婦は卵をもらいうけ、籠を編み、電灯であたためてひよこを孵す。嬉しそうに卵をのそくふたり。
彼らには一番の財産がロバだ。ロバに荷を引かせ、畑を耕し、トウモロコシや麦を収穫する。ふたりとも、文句ひとつ言わず、黙々と重労働の農作業の日々。
荷車にクイインを乗せてロバを引いていると、村はずれで雑談している村人たちからは「仲のいいことだ・・」と冷やかされる。
二度三度と輸血を依頼するチャンだったが、クイインにやる、とコートをプレゼントする。

ヨウティエは古い家を出て、みずから日干し煉瓦をつくる日々。
ある夜、激しい雨からレンガを守ろうと、豪雨の中でカバーを掛けるヨウティエに、クイインも制止を振り切ってついてくる。
そんなふうにして、ふたりのきずなは、日々深まっていった。

日干し煉瓦を積み上げ、屋根を葺いて、手作りの家が出来上がった。
麦の粒を花びらの形にして、クイインの腕に押し当て、ヨウティエは「おまえのしるしだ」とほほえむ。
ふだんはほとんどしゃべらないクイインは、初めてヨウティエと娶わせられたときの日のことを話す。あなたが、ロバに対して優しく扱っているのを見て、いい人だな、と思ったの、と。
彼女は最初から、ヨウティエの人柄を分かっていたのだ。

政府の政策で、古い家を取り壊し、新しく集合住宅に移れば、奨励金が出るという。しかしそんなところに住まって、ロバや鶏の世話はどうするのか・・

だがある日、ヨウティエは、クイインが川に転落したことを知らされる。
必死に川から彼女を引き上げて助けようとするのだったが・・

久しぶりに見た中国映画。リー・ルイジン監督作品。
ヨウティエ役のウー・レンリンは監督の叔父だが、実際の農民で、俳優は本職ではないそうだ。

なんといってもヨウティエとクイインとの夫婦愛に心打たれる映画だ。
「好き」「愛してる」なんてセリフはないのに、いたわりあって、いつくしみあって大地に生きるふたりの姿は、夫婦愛以上の人間愛にあふれている。
みずから望んだ結婚ではなかったものの、やがてこれ以上ない強い結びつきが生まれる。
年収は、学歴は?と「条件」ばかりの婚活アプリが幅を利かせる21世紀からすると、逆にその運命の中に飛び込んで、生活を切り開こうとするふたりがすがすがしい。
(2月28日、シネ・リーブル梅田)
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