先日、第50巻をもって完結した漫画「ちはやふる」。
これを機に、第1巻から読み返している所です。
この作品の面白さは、ゲームもの、スポーツものの主眼である「戦いの行方」を丹念に追っている所にあるのはもちろんですが、それに加えてスクリューボール・コメディの要素を多分に盛り込んだ点に負うところも大きいと思います。
とにかく、登場人物一人一人が微妙に「おかしい」のですよ。
ヒロインの千早がド外れたかるたバカであるのを筆頭に、その周辺の仲間たちやライバルたちも、妙なクセというか個性を備えているのが、実に愉快なのです。
特に、千早の最強最大の敵・若宮詩暢が、なぜかマイナーなゆるキャラのディープなファンで、不思議にもその一点でのみ、千早と通じ合ってしまうというのが笑えるんですよね。
もう一つ大事なのは、この作品が「勝者を讃える」のではなく「敗者をを慰謝する」ことに力点を置いていること。つまり、負けた側の人間の悔しさ悲しさにこそ注目し掬い上げようとしているんですね。
勝者の後ろにいる、夥しい数の敗者。強き者は、常に弱い者、力の及ばなかった者に支えられているのだということに、作者がきちんと目を向けているのが、読んでいて本当によくわかるんです。
スティーブン・ザイリアンの「ボビー・フィッシャーを探して」も、敗者の心情に寄り添うような優しさを持った作品でしたが、「ちはやふる」にも同じような温かい感触がありましたね。
この作品、数年前に映画化もされてるので、そちらも久々に観てみようかな。
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