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2022年11月11日13:00

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二川宿～本陣、吉田宿～湊神明社と吉田湊跡②

(続き)

今年9月、奥浜名湖三ヶ日の濱名惣社神明宮と初生衣神社に行った事で、「おんぞ祭」について学んだ。
以下参。
　https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983185105&owner_id=3341406

初生衣神社の織殿で作られた絹の御衣(おんぞ)は、おんぞ祭で賑々しく伊勢神宮へ奉献の旅に出る。
姫街道で吉田宿に入り、まずは「湊神明社」に届けられる。ここでもおんぞ祭が行われ、「吉田湊」から船で三河湾に出、伊良湖経由で伊勢へと渡る。
これから行くのは、その湊神明社と吉田湊跡である。
おんぞ祭に関係する事物が見られないだろうか、そんな期待があった。

湊神明社は吉田城から豊川沿いに1km程川下にある。
正面より拝殿を見る。

神明社の由緒書き。

それによれば、創建は飛鳥時代白鳳期。祭神は天照大御神で伊勢神宮との関係が深い。
3～4行目に、1615(元和元)年より「御衣奉献ノ神事ガアル」と彫り込まれている。

「おんぞ祭」は吉田三大祭りの１つとされていて、直垂姿の男性2人による衣踊りと、町家の女児達が華やかな装いでおんぞ唄に合わせおんぞ踊りで、4日間街中を練り歩いたと伝えられる。
1875(明治8)年に中止となったが、1949(昭和24)年に復活した由。

吉田湊跡は、神明社から更に川下へ数百メートル。
車は神明社に置き、旧東海道(現在は県道496号線)に沿って大回り、5分も歩くと豊川に架かる「豊橋」南詰めに出る。

橋の名である「豊橋」は「とよはし」でなく「とよばし」と読む。
「とよばし」の手前を下流へ100m程行った辺りに吉田湊跡はあった。
堤防の下部に古い石垣が今も残る。

この港は、奥三河の産品の集積地で、お伊勢参りの旅人も含め、伊勢湾海上交通の要衝となり、舟運で大いに栄えた。
川は満々としていて、水鳥の群れがゆったりと泳いでいる。

「とよばし」と呼ばれるようになったのは明治になってからで、それ以前この橋は「吉田大橋」と言われており、今より少々下流、吉田湊のすぐ手前で東海道を渡していた。

先に紹介した香川元太郎の《吉田城》をもう一度見直してみる。
当該の部分をクローズアップすると、

上の方に橋が描かれているが、これが「とよばし」であろう。
橋の袂左岸には船がたくさん出入りしている。これが吉田湊に違いない。
「とよばし」へつながっている街道が東海道だ。
手前でクランクする街道と豊川の間には小さな半月形の池がある。これは湊神明社の境内、築島弁天社の池だろう。
実物の写真は以下。

画家本人によると、この絵は時代を江戸後期としている由。時代考証の正確さと精緻さに驚くばかりだ。

昨日の日記のリンクに、歌川広重の《東海道五十三次》から吉田城と吉田大橋の景も貼り付けてあるので、併せてご覧頂けたらと思う。

現代に至り、「吉田大橋」は「とよばし」の1km弱上手、国道1号線を渡す橋として1959年に新設されたものを指す事になった。実にややこしい！

吉田湊跡から湊神明社に戻ろうと堤防を歩いていくと、上手から散歩してくる初老の女性と会った。
私はちょっと声をかけてみた、
「この辺りにお住いですか？近くの湊神明社でおんぞ祭というのが行われると聞いたのですが、ご存知ないですか？」
「ええ、知ってますよ。最近は新型コロナのせいで何回か中止になりましたけど。」
「随分賑やかなお祭なんですか？」
「そうですよ。女の子達が着物を着て歌って踊るんですよ。」
「コロナのせいで中止になって、淋しいですね。
奥浜名湖の三ケ日で織られた絹が、お伊勢さんに奉納するためにここ迄運ばれてくるんですよね？」
すると女性はニコニコして驚く事を話してくれた。
「私は少し下流の方に住んでいるんですけど、うちも昔は桑畑を持っていて、蚕さんを飼っていたんですよ。父親が養蚕業の家々の長をやっていたので、お祭の時には、バスを何台も出したものですよ。
お祭りは確か4月25日だったかしらね。」
「へえ～、そうですか！この辺りも絹織物が盛んだったんですね。」

思いもよらぬ興味深い話を聴く事ができ、女性にはおおいに感謝して別れた。
神衣は単に三ケ日から伊勢神宮への経路に当たっているからここに寄ったのでなく、前々から両者には織物業のつながりがあったのだ。
訊き漏らしたが、ひょっとしたら、こちらで織られた絹布も三ケ日の御衣に加えて伊勢へ奉献していたのかもしれない。
バスは大勢の同業者を湊神明社迄乗せてきたのか、それとも伊良湖迄出てフェリーニに乗り伊勢神宮迄同行したのか？
あとから、もう少し訊いておけばよかったと思ったのだった。
こちらの祭は5月第2土曜日との資料もあるのだが、年によってスケジュールが変わる事があるのだろうか？

実はこの日は、別に大事な用事があって豊橋迄やってきたのだ。
「穂の国とよはし芸術劇場PLAT」で、来年2月に木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』の公演があるのだが、主宰者木ノ下裕一による事前トーク･アンド･レクチャーが19:00から同館で行われる。これを聴くのが当日の主目的だった。
湊神明社と吉田湊跡に別れを告げ、途中軽い夕食をとり、陽の落ちた豊橋の街を私はPLATに向かって歩いていった。
講演内容はここでは書かない。木ノ下歌舞伎を2月に観たあと、その感想に加味してレポートを書くつもりだ。
　

(お終い)
　

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