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2024年05月24日00:09

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文芸大聴講「日本伝統建築」第6回「中世の寺院建築」の内容とレポート

日本伝統建築ノート⑥　中世の寺院建築

中世の日本に中国(当時宋)から新しい寺院建築様式が導入された。1つを「大仏様(だいぶつよう)」もう1つを「禅宗様(ぜんしゅうよう)」と言う。それ以前迄の様式を「和様」と呼ぶ事になった。

1　大仏様

焼失した東大寺復興のために用いられる事になった様式。
この一大プロジェクトを負ったのは中国へ渡航経験のある俊乗坊重源(1121-1206)。大勧進を展開して資金と物資を調達した。

東大寺金堂(大仏殿)被害と復興の歴史
・通称「南都焼き討ち」；1181(治承４)年、源平合戦の中、平重衡による奈良襲撃。東大寺や興福寺が甚大な被害を受け、大仏と大仏殿焼失。翌年、重源、後白河法皇によって東大寺勧進職に就く。
大仏殿再建；中国福建省近辺の建築様式(大仏様)を用い、1190(建久元)年大仏殿再建。1195年(建久６)年落慶法要。
・東大寺大仏殿の戦い；1567(文禄10)年、松永久秀らの戦いにより大仏殿再び焼失。
大仏殿再々建；1709(宝永6)年落慶法要。
これが現在見る事ができる大仏殿。桁行5間、梁間5間、一重裳階付、寄棟造、本瓦葺、正面軒唐破風付。
サイズは創建当初の正面幅85.8m→現在57.5m、約2/3に。奥行きと高さは殆ど同じ。

現存する大仏様の建築物、東大寺南大門と兵庫県の浄土寺浄土堂。

・東大寺南大門；1199(正治元)年建造【国宝】。5間3戸、二重門、入母屋造、本瓦葺。

・大仏様の構造の特徴
①貫で柱の軸組を水平方向に固める。長押は用いない。　　　　　
②斗栱は挿肘木を重ねて軒の荷重を支える。6手先斗栱。
　手先の組物は左右へひろがらない。
③皿斗を使う。鬼斗は使わない。
　同一大の皿斗付斗のみを使う。
④軒は1軒、垂木先に鼻隠板。
⑤特徴的な繰型。木鼻等。
⑥垂木は隅扇垂木。
⑦化粧屋根裏。野屋根を作らない、天井を張らない。
⑧桟唐戸を用い、藁座で軒に吊る。

・浄土寺浄土堂
1192(建久3)年建造【国宝】。桁行3間、梁間3間、一重、宝形造、本瓦葺。

・大仏様の構造の特徴
①～⑧は東大寺南大門と同。
⑨遊離尾垂木を用いる。
⑩虹梁は円形断面で太い。下面に錫杖彫り。

重源没後、大仏様の特徴を備えたものは限定される事となった。
多くの特徴を備えたものとして、東大寺鐘楼；1207-11(承元年間)年再建【国宝】。
一部の特徴を備えたものとして、東大寺開山堂；1250(建長2)、元興寺本堂；1244(寛元2)年、唐招提寺鼓楼；1240(仁治元)年、興福寺北円堂；1210(承元4)年、霊山寺本堂；1283(弘安6)年、長弓寺本堂；1279(弘安2)年。何れも【国宝】。

従来の和様を基調として大仏様が部分的に加味されたものを「新和様」と呼ばれるようになった。

2　禅宗様

禅宗の導入と興隆の歴史
・栄西(1141-1215)；12世紀末、日本に初めて禅宗をもたらす。
・禅宗の普及；13世紀。
　北条時頼、1253(建長5)年、建長寺創建。地震で焼失。現存するのは後年のもの。
　幕府「五山十刹」制度制定と各寺認定。各国に安国寺建立。
・禅宗の隆盛；14世紀。功山寺仏殿(山口県下関市)、円覚寺舎利殿(鎌倉)建造。共に【国宝】。

禅宗様の建造物。
・東大寺鐘楼；大仏様に禅宗様を加味して栄西が再建【国宝】。
・円覚寺舎利殿；室町時代中期【国宝】。
桁行3間、梁間3間、一重裳階付、入母屋造、杮葺き。

・禅宗様の構造の特徴
①一重裳階付
②屋根の強い反り、扇垂木。
③部材の木柄が細く、繊細な意匠。
④頭貫上の台座に詰物。
⑤基壇上に建て、床は土間(瓦･石･せん等)。礎盤上に粽付柱。
⑥欄間；波型連子、開口部；花頭窓、建具；藁座に桟唐戸。
　壁；竪板張り。
⑦内部架構(斗栱や梁等)を見せる意匠。
⑧海老虹梁で柱間をつなぐ。
⑨身舎は鏡天上。庇は化粧屋根天井、尾垂木尻で母屋を受ける。
⑩尾垂木；屋根の強い反りを実現。肘木；円弧曲線、笹繰。
　虹梁；袖切、欠眉、錫杖彫り。絵様；繰形や渦紋(木鼻･挙鼻)。
　実肘木、台輪の繰形等。

禅宗様、その他の建造物。
・正福寺地蔵堂；1407(応永14)年。清白寺仏殿；1415(応永22)年。永保寺(岐阜県多治見市)観音堂･開山堂；室町時代前期。安楽寺(長野県上田市)八角三重塔；13世紀末。何れも【国宝】。
・建長寺；北条時頼(1227-63)の造営。現存せず「指図」のみ残る。
　

〈参考資料〉
「英雄たちの選択」～『よみがえれ大仏～重源61歳からの挑戦』
　講師西山厚(帝塚山大学客員教授),真山仁(小説家)
　ディレクター島紗里
　放送 5/20、NHK-BS
　

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