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2022年09月24日15:14

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1564

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1564      

伊東潤 「修羅奔る夜」           

伊東潤は歴史時代小説家だが近年は現代小説も
著わす。本作品は現代小説で、テーマは青森の
ねぶた祭。ねぶた師のねぶた制作の話である。

紗栄子は東京の派遣社員。アニメーターになる
のが夢だが、うまくいかず、私生活も恋人も
いないし不安な毎日を過ごしている。そんな
彼女に青森の郷里から連絡がくる。畳職人で
ねぶた師でもある兄の春馬が脳腫瘍にかかったのだ。

紗栄子と春馬の父親もねぶた師だったが他界して
いる。春馬の夢は次回こそ「ねぶた大賞」をとる
こと。だが、彼の病は重く、医師は早期の手術を
薦める。しかし手術をしていてはねぶた制作は
できない。

紗栄子はねぶた制作に十分に力を発揮できない
兄を手伝い、スポンサーとの調整や制作スタッフの
確保、さらには囃子や跳人(踊り手)などの手配に
奔走する。

まあ最初から結末が見えている小説ではあるが、
ねぶた完成までが一筋縄ではいかず、そのプロセス
および家族の葛藤も描かれる。春馬を死なせない
ためには手術させ療養させることが一番なのだが、
ねぶたが命の彼はねぶた制作を最優先し、紗栄子や
華族も兄の意向を尊重する。

ねぶたという祭りは青森市民にとってどのような
存在なのか、またねぶたが出来上がるまでの
関係者とその役割などが丁寧に著わされている。

実際、毎年約20台のねぶたが青森ねぶたでは
出されるが、経済的にはかなりきついようだ。
ねぶた師にしても、ねぶた制作だけで食っている
人はほとんどなく多くは別に正業を持っている。

ともあれ、傑作というほどではないものの、
気持ちの良いできばえである。ねぶた祭りを
見に行く人は行く前にぜひ読んでおいたほうが
良い作品だ。







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