メフディ・モザッファリ『イスラム主義 新たな全体主義』（鹿島正裕訳、風行社、2018年）を読了。本書は「イスラム主義」を「イスラムの全体主義的解釈に基づき、宗教に着想を得たイデオロギーで、その最終的目標はあらゆる手段を用いて世界を征服することである」と定義する。それは政治思想・運動としてボルシェビズムやファシズムに続く「新たな全体主義」であるとされる。
ヨーロッパで第一次世界大戦の悲劇が汎ゲルマン主義や共産主義などの過激思想を台頭させた。ムスリム世界でもオスマン帝国の崩壊がイスラムの過激思想を生み出した。ボルシェビズムやファシズムは第一次世界大戦の終結前夜に一部の国で政権を獲得したが、イスラム主義は一九七九年に初めてイランで政権を獲得した。
その後にアフガニスタンでタリバンが、シリアとイラクで「イスラム国」が一時、一部地域で政権を樹立した。イスラム主義は多様な集団に分かれているが、いずれもカリフ政またはイマーム政を実現してイスラム教に世界を支配させなければならず、そのためには暴力ないし専制的な手段を用いても構わないと考えている。他宗教や無宗教を一切認めない不寛容姓こそがイスラム主義の全体主義思想たる由縁とされる。
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