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2022年04月13日09:10

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1530

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1530

藤原無雨「その午後、巨匠たちは、」

一月くらい前に、この作家の作品を紹介したが、
本作品は最新作である。ハードカバーで130
ページくらい。

奇妙な小説である。

ある漁村に不老の女性がやって来て住み着く。
村にとって巫女のような存在だ。彼女が来た
ことで海は落ち着き不漁の心配がなくなって
村民らは喜ぶ。

さらに、その女性は6人の画家を呼び寄せる。
レンブラント、フリードリッヒ、ターナー、
モネ、北斎、ダリといった錚々たる顔ぶれだ。
彼らは神社に祀られ、その作品も展示される。
だが、海は再び荒海となる。

女性は旅に出て、妊娠して村に戻ってくる。
そして男子を出産し、その子が神となるが・・。

この小説は何を表しているのだろう? 非常に
難解だ。僕の解釈は神がテーマかなと思う。
神あるいは宗教は人間にとって切り離せない
ものとして時代と地域を問わずに存在してきた。
だが、その功罪を含む意義はとてもあいまいだ。

時代と場所を飛び越えて一堂に会する6人の
巨匠が面白い。彼らの絵の描き方、日常生活の
ふるまい、アートに対する思い等が、さもありなん
という感じで著わされている。絵画ファンなら
にやりとするかもしれない。

また、この6人のアーティストも含め、本作品の
特長は注釈の多さである。ターナーやダリの
作品や人を知らなくても注を読めば、だいたいの
ことは分かる。そして、何より作品を普通でない
状態にしているのは、この注釈がいつのまにか
本文となって混じりあうところにある。

読者はなんとも不思議な体験を味わうことに
なる。

小説というものの可能性を感じられる作品だ。
この作家の今後の作品は見逃せない。

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