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2022年03月21日15:30

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第17回大阪アジアン映画祭 韓国映画「おひとりさま族」

ジナ(コン・スンヨン)はカード会社のコールセンターで働いているが、クレーム電話にも冷静に対応し、トップの成績を上げている。
常連で電話をかけてくる「要注意客」の男性が「タイムマシンを作りました。2002年に行ってもカードは使えますか?」と聞いてきても、「申し訳ありませんが、弊社のカードは時間旅行用に対応しておりません」と切り返す。
ランチはいつもひとり。
高層マンションの一室にひとりで暮らし、通勤途中もいつもスマホで動画を見続ける生活。
まるで外界のものを一切遮断するように。
帰宅しようとすると、マンションの通路で隣人の男が話しかけてくるのがうっとおしい。
そんな彼女に女性上司から「今度から新人の教育係をしてほしい」と依頼が。

極力、人と関わり合いになりたくないジナにとっては、面倒極まりなく断るものの、これは業務命令。
しぶしぶ新人のスジン(チョン・ダウン)の指導をすることになるが、ジナの教え方はそっけない。
スジンはジナとコミュニケーションを取ろうと「先輩、これ喉にいいそうです」とスプレーを持参したり、「ランチ、いっしょにいいですか?」とジナの行きつけのお店についていったりするが、なんとジナは、ふたり分の席があいているというのに、カウンターにひとつだけあいている席にさっと座って、ひとり、黙々と食べている。

ジナの実家では先日母が亡くなり、相続の手続きに行く。
父は浮気して母に苦労を掛けていたのに、なぜか母は自分の財産は全部夫に相続する遺言を残していた。

家でジナはずっとスマホを見ている。それは実家のリビングの映像。
母が心配で、以前、隠しカメラを設置していたのだ。
そのままカメラを置いているのだが、父は教会の信者たちとなにやら楽しげな様子。
複雑な気持ちになるジナ。

ジナの隣人が亡くなっていたことがわかった。しかも死後1週間たつという。
では、彼女に声をかけていたあの隣人の姿は?
ほどなく、その部屋は新しい借り手が見つかるが、その男性は格安の家賃なのが腑に落ちず、たまたま帰宅してきたジナに訊く。彼女は、「幽霊が出るんですよ」と答える。

スジンの研修は、はかどらない。クレーム電話に反発し「なぜわたしが謝らなくちゃいけないんですか?」と怒ってしまう。
上司からも注意を受け、ジナもしぶしぶ教育係を続けざるを得ない。

マンションの新しい隣人は、その友人たちも集まり、孤独死した男のためお祓いをしてる。そのにぎわいと、父親の実家での楽し気な様子は、ジナの心をざわつかせた。

また「要注意客」から電話がかかって来た。スジンに対応させるジナ。
例によって2002年にこのカードは使えるのか、と聞いてくる。
スジンは「どうして2002年に行きたいんですか」とたずねてみた。
その人物は「日韓共催ワールドカップがあった年ですよ! あのときはみんなで心を一つにして盛り上がりました! テーハンミングク! って・・ああ、あの頃に戻りたい・・」と切々と語りだすのだった。

スジンが出勤してこない。
そして彼女が退社したことがわかった。
ジナはスジンに電話をかける。
ジナは彼女に笑顔ひとつ見せなかったのにスジンは「先輩、いろいろとありがとうございました。さよならも言わずに辞めてごめんなさい」と謝る。
ジナの心がまた少しだけ揺れ動く。

ジナは今の職場を辞めることにした。
上司の女性は喫煙所でいっしょになったジナをねぎらいつつ、有能な彼女の退職を惜しむ。


大きな事件が起こるわけではない、どこか淡々とした、独身女性の日常を描いているのに、見終ってしばらくしてじわじわと胸に響いてくるような映画である。
コン・スンヨンは、どこか常盤貴子に似た面差し。
バリアを張るようにいつもひとりで行動し、群れないし、自分だけの世界で生きているのだが、そっけなくしか接していなかったスジンにお礼を言われ、上司に最後に声をかけられ、人とのつながりがあってこその生活なのだ、と感じていく。
そういうさりげない描き方がうまい映画だ。
また要注意客が、2002年のW杯のことを語る場面は、ある意味、政党支持や男性と女性、高齢者と若者世代で「分断」が社会問題になっている、韓国社会の一面をにおわせているのかも、とも思った。
今回上映の邦題は「おひとりさま族」となっているが、原題は「ひとりで生きる人たち」。直訳だけど、こちらのほうがいいのでは? と思った。
(3月19日、ABCホール)
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